2004
 夏山合宿
 in瑞牆山

  若手のホープと登った「左岩稜翼ルート(W+/A1)」 下原、神林            
記録:下原

 十一面正面壁にある「翼ルート」は、左岸壁の凹状を、チムニーをつなげながら登るなかなか楽しいルートだ。前に登ったのは1999年の春。井土さんとヨセミテのサラテを登る練習をしていた時のことで、2ピッチ目の大チムニーをはりきってリードして嬉しかったことを覚えている。それから、1ピッチ目の人工が難しかったことや、4ピッチ目ではどこを登って良いのかわからずウロウロして、更に終了点になりそうなポイントが無くて泣きそうになったことなども思い出せる。自分にとって「翼ルート」は印象深いルートだった。
今回はこのルートに、今年会に入って来た新人の神林さんと登ることになった。新人で、しかも25歳という若さだが、彼は山の本番ルートには経験があるようだ。前日登った「調和の幻想」はオールフォローだったというので「今日こそはこのルートの花形ピッチ"大チムニー"を登ってもらいましょう!」と話は決まった。つまり私が奇数ピッチ。彼が偶数ピッチで、私は5年前とは違うピッチをリードすることになった。
1P目は、記録によっては5.8だと書いてあることもあるが、わたしらチビッ子凡人クラマーには、ぜったいA1でなと抜けられません(でしたぁ〜)。出だしは凹角の右壁を短い間隔でリングボルト3つ。その後はクラックが走っているのでしばらく支点はなし。左側に出てちょっと上がったところで、一箇所悪いところがあった。「ここでまさかの敗退?!」とか一瞬思ったけど、その気になればなんとかなる。何となく効きの悪そうな所にカムをセットしてロープをクリップ。アブミの最上段につま先立ちして、ガバとは言えないホールドに飛び付いた。その後は脆い岩と木の根っこの入り込んだフェースを慎重にこなし大チムニーが見えるテラスまであがる。手前に2.3箇所残置スリングのある立木があるが、次ぎのピッチのビレーを考えれば、終了点は一番奥まで伸ばした方が良さそうだ。
2P目はいよいよ大チムニーを神林さんリード。チムニーからの乗越しで苦労するも着実にクリアー。チムニーと言ってもプロテクションは取れるので、ドキドキはちょっと。チムニーを抜けた後は傾斜の緩いハンドクラックと広めのクラックが続き、ロープ40m以上出したところで大テラスに着く。内容といい長さといい、充実のピッチです!。そして最初の2ピッチ目までが終わると、何となく精神的に楽ちんになれる。
3ピッチ目は右へ大きくトラバースする。ほとんど歩きで角を曲がると突然平らな地面から、6mほどのコの字状のチムニーが立ちはだかる。登りは完全にチムニー登りだが、コナーにはクラックがありプロテクションが取れる。チムニーを登っていると、「何やってんの〜」とベルジュエールを登るG氏から声がかかる。パートナーの蔵○氏が用事で木陰に入ってしまい暇のようだ。このピッチまではベルジュエールを登るパーティーと普通に会話が出来る。この後はモアイフェースの影になり様子はわからなくなる。チムニーを右に出ると右上するハンドクラックが続き立ち木のあるテラスで終了。このピッチで神林さんの時計がリセットされ、時間のわからない二人になってしまった。
4ピッチ目はひっくり返りそうなフェース登りからクラックへ。その後ロープからは行きつ戻りつしている様子が伝わってくる。ここは確か、どこを登っていいのかわからず、ウロウロしてしまったとこだよなぁと思い返す。フォローで登って行くと、見覚えのある3本のクラック達が「どれ登るの〜」と呼びかけてくる。自分がどれを登ったかはっきり覚えていないのは情けないが、神林さんの選んだ左のクラックは、最後の抜けがプロテクションの取れないオフィズス登りで恐ろしく感じたが、良く頑張った。
最終ピッチは前回もルート図と合わなくて変だと思ったが、今までのラインでルートを外れているとは考えられない。長いチムニーのように書かれているが、6mほどの短いクラックを抜けると潅木帯に突入しクライミングは終了する。踏み後をたどると直ぐにコルに出るがその後は延々と踏み後を頼りにブッシュ帯を進む。直上ではなく左に巻いて正面壁の裏側でブッシュ帯を抜ける。踏み後が四方にあり、途中何度か迷った。頂上周辺はいくつもバンドがあり、つながっていることが多いが、駐車場が見える場所まで正面壁を巻いたが、ルートと合流している感じの場所がよくわからず、早々に下降路の確認に移った。初めて瑞牆山正面壁に来た神林さんを頂上に立たせたかったけど、「また登りに来ますから」の言葉に、正面壁をあとにした。左岸壁とは反対側のコルへと下降に入ったところで、井土・蔵元パーティーの声が聞こえて来た。
取り付きに戻り、井土さん達が降りて来るのを待ったが、ちっとも来ないし時間も気になったので下ることにした。少し下ると正面壁や左岸壁の様子が良く見えるので、眺めながらゆっくりと歩いた。青い空ときれいな岩潅木の緑。さっきまで登っていたラインまでが確認できる。このスケールの岩を、こうして短時間で登って降りて来られたことに面白さを実感した。
十一面岩に行って見たいと思っている人が、不安なく取り付けるように、今回は細かい記録を書きました。直前にクラックの練習をして来た神林さんにとっても、ピッタシのルートだったようです。このエリアのマルチの入門ルートとして、次ぎにつなげるルートとして、ぜひ登ってほしい1本です。 おわり