北ア 唐沢岳幕岩 左岩壁 S字状ルート

メンバー:石原博之/神林裕 

2005年6月18日〜19日

行動概要:
18日 
葛温泉駐車場(4:45)〜大町の宿(7:30)/(7:50)〜迷う〜S字ルート登攀開始(10:45)〜終了点(18:00)・大休止〜さらにのぼって踏み跡に合流(19:00)〜行動終了・BP(20:00)
19日
BP(4:30)〜右稜の頭(5:30)〜大町の宿(7:25)〜葛温泉駐車場(10:45)

記  録: 
6月18日
 葛温泉の駐車場で2時間程の短い仮眠を取り、4:45出発。7:30には大町の宿着、余分な荷物をデポ。
 B沢を遡りS字の取付に向かうが、取付が分からない。明峰ルート取付のボルトラダーを発見できればすぐ分かるさとタカをくくり、岩を見ながらいくつかのチョックストーンを越えて沢をどんどんつめて行くが、発見できぬまま左方ルンゼの出合に出てしまった。B沢を下りながら、再び探すと明峰ルート発見。そこから上流へ1つチョックストーンを超えてすぐのところがS字状ルートの取り付きだった。せっかく早起きしたのに1時間半くらい時間をロス。
 草付の岩場を右上してブッシュに入る。最初こそ念のためにロープを出したが踏み跡もあったのでコンテでぐいぐい登ってゆくと、垂壁の基部に出る。ロープを結び、神林がリード。基部の安定した草付バンドをクライムダウン気味にトラバース、ブッシュ帯を抜けるとぱっと岩場が広がった。ここから実質的なロッククライミングが始まった。(石原、神林記)
 1ピッチ目、石原リード。フェースを右上ぎみにトラバースしてブッシュ帯に入り更にゆくが、ルンゼに出たところで行き詰まる。一旦ビレイ点に戻り再度ルートを変えていろいろ試してみるが結局解決できず、神林にリード交代。神林もおなじ所で行き詰まり戻ってきたが、下のほうにバンドのようなものがみえたので、今度はクライムダウンしてゆく。(石原記)
 ノーピンでクライムダウンすると下向きに打たれたハーケン有り。さらにトラバース気味にクライムダウンしてバンドに降りる。細い潅木が密集するバンドを右上。石原のあと5メートルのコールで終了点を探すが全く無し。細い潅木にシュリンゲを巻きつけビレイ。
 2ピッチ目、そのまま神林リード。トラバース7mほどでリングボルト有り。さらに真横にトラバースしようとするが難しそう。右上するレッジに這い上がる。容易に右上してゆくと、フレークに回収できなくなったキャメロット1番を発見。よく効いていたのでプロテクションとして使用。さらに右上すると突き当たりは狭い泥の垂壁。ほんの1手で上のガバが掴めそうだが、バランスが悪くランナウトした状態では躊躇する。結局右のフェイスに出て直上。トラバースの出だしの1歩が微妙だった。再びレッジに立つ。目の前の垂壁からは水がぽたぽた流れている。右のフェイスにボルトラダーを発見。リングボルトにクリップし、更に右を探るが行けなそうな感じ。別のルートに入りこんだと知ってちょっとがっかり。ラダーのリングボルト2本を用いて石原をビレイ。
 3ピッチ目、さらに神林リード。ボルトラダー(雲峰ルートと思われる)でフェイスを直上、10m弱で傾斜が緩み、リングボルト3本?の終了点に達する。枯れ木テラスに出たようだ。壁から水が滴っていたので、啜るが渇きがおさまらない。(神林記)
 4ピッチ目、石原リード。スラブ左上。途中水が少し流れていたので、啜りながらのぼる。何しろ今日は天気が良いのでのどが渇いて仕方がない。安定したところ迄のぼり、ハーケンを打ってビレイ。(石原記)
 5ピッチ目、神林リード。快適なスラブ。ピンがなかなか見当たらない上に、どこでも登っていけそうなので、ルートファインディングに気を付けながら左上して大岩テラスに到着。リングボルト2本?とぺツルの終了点だった。渇きと暑さで呼吸が早くなり、それが回復しなくなってきた。(神林記)
 6ピッチ目、石原リード。凹角上スラブを左上。ピンが少なくランナウトしがちで結構怖いがフリクションが利くので足元は快適、どんどんロープを伸ばす。神林のあと5メートルのコールで支点を探し、ブッシュ目指してのぼってゆくが、ロープがいっぱいになってしまったので手前の不安定なブッシュを使って取り合えず神林をビレイ。神林は、落ちないように気を使いながら安定したところまでのぼり、そこで支点を作って再度石原をビレイ。石原はさらにロープを伸ばし、リングボルトとハーケンの打ってあるレッジでピッチを切る。
 今日の天気のよさと暑さで2人とも疲労が激しい。日射病か脱水症状か、眩暈がするとか手足が痺れるとか、何しろちょっとやばそうな兆候を見せていた。ビバーク用の水が不足するのが心配だったが、多めに水を飲んで、5分ほど小休止。(石原記)
 7ピッチ目、神林リード。スラブ状フェイス直上。数手ごとに息を整え、手の痺れを確認しながら登る。出だしこそピンがあったが上部では無くなる。潅木で1ヶ所プロテクションをとって、テラスに這い上がって終了点。(神林記)
 8ピッチ目、石原リード。上部の2つあるハングを目指して凹角をのぼってゆき、左のハングの真下に着く。ひさしの下をブッシュをつかみながらトラバース、木登りで右手のフェースに出るとビレイ点があった。明峰ルートに合流したようである。(石原記)
 9ピッチ目、神林リード。間隔の近いボルトラダーをアブミで登ってゆき、ブッシュに入ってすこし上ると安定したトラバース・バンドにでた。終了点のようなので太い潅木で石原をビレイ。(神林記)
終了点から踏み跡を右に行くと沢に出た。10メートルくらいの滝がありぽたぽたと水流もあったので水を飲み、水筒につめて一安心である。
これより右には行けそうになかったので、大休止してから今度は踏み跡を左に行くと、S字オリジナルの終了点だろうか、藪の中の草むした露岩にうたれていたリングボルトをビレイ点にして、石原リードでこれを右上する。ブッシュをこいでゆくとゆるいスラブに出る。さらに右上して再度ブッシュに入り、ロープいっぱい伸ばしてピッチを切る。この先はコンテで藪の中を右方向へ進み、先ほどの滝上の沢に下りることができた。結構水量豊富でがぶ飲みして水筒を満タンにできた。
沢を渡るとすぐに赤テープ発見。畠山ルートの終了点付近のようだ。踏み跡を時々見失いながらたどってゆく。暗くなってきたので 20時に行動終了、藪の中でビバーク。ビバーク用の食料を大町の宿に忘れて来てしまったので、行動食で軽く夕飯をとり、さっさと寝る。多少外傾していたが、快適な寝床であった。ただブヨの多さには閉口したが・・・(石原記)

6月19日
明るくなると同時に行動開始。石原は先々週畠山ルートを登ってこの辺りを歩いているのだが、それでも迷った。とにかく右稜の頭目指して右に右に歩いてゆく。右稜に出たと思われるあたりから藪を下り、広いスラブに出る。クライムダウンできそうにないので潅木の残置スリングにもう一本スリングを足して支点にし、懸垂下降して下部のブッシュ帯に降りると、その先のスラブは切れ落ちているようだったので幕岩側に乗越すとひょいと大凹角ルートの終了点に出た。
あとは下降ルートを懸垂で下り、大町の宿でデポした荷を回収。のんびりしたいところだが、石原が本日6時の豊川での東三遭対協の総会に出席しなくてはならないのでさっさと下山の途に着く。

感想など。下部はルートが分かりづらい。全体的に残置支点が少なく、緊張するが、岩のフリクションは非常によく効く。ブッシュで支点を取ったり、草付をだまして掴んでホールドにすることが多かった。摂理が少なく、フレンズ類を使う場面は少ない。ブヨか何か吸血性の昆虫が多く、ひどい目にあった。忘れ物が多く、反省点の多い山行だったが、終わってみればそれで却って印象深い山旅になりました。(石原)/ルートファインディングが難しく、ランナウトの多いルートでしたが、面白いルートでした。あと、手足が痺れた状態でも4級の岩場をリードできたことは収穫でした。(痺れないならそれに越したことはありませんが…)(神林)
アプローチについて。今回は金時の滝ではなく左岸を巻きました。初めは沢沿いに普通にアプローチし、右岸のFIXロープをたぐり数mの木の橋を渡ると、その先に堰堤とアルミ梯子が見えますが、そこから左岸を見ると赤布がありこれが巻き道の入り口です。FIXロープに導かれて滝を巻きますが、結構大汗かきます。滝の落ち口付近で沢に合流する地点では、FIXに頼って急斜面を下降することになります。下山のときは、左岸に注意していれば、このFIXロープがはっきり見えます。時間的、体力的には金時の滝のほうが楽だと思いますが、安全性から見たら左岸の巻き道のほうが良いと思います。
記:石原博之/神林裕