ひいちゃんの JoshuaTree日記

By ひいちゃん


4/28(土)(出発の日、名古屋空港〜ジョシュア)
 ゴールデンウィーク到来!ついに、アメリカに向けて出発する日がやってきた。朝5時に家を出て、9:30発大韓の飛行機でソウルへ向かう。
私が旅行中一番好きな時間は、飛行に乗る前と離陸してしばらくの時間だ。ビールを飲んではしゃぎまくっていると、隣の井土さんは落ちついた様子で、「今からテストをする。」と(自作の)Hit Listを取り出した。それから私の事前勉強の仕上り具合を確認するテストが始まったのだ。
「アストロドームがあるエリアは?」
「ううー、分からん…」 
「じゃあ、そこの有名なスラブの名ルートは?」
「…分からん……」
このような問答を何度も繰返し、ようやくジョシュアのクラインミングエリアが、私の頭にも描けるようになってきた。昼前には、ソウルのインチョン空港に着き、ピカピカの空港の中を歩き回った(待ち時間3時間ほど)。インチョンを飛び立ちロサンゼルスまでの間、私は今までで一番ひどい飛行機酔いに襲われ、夕飯のビビンバをもどした後は、何も口に出来なかった(T_T)。
9:30ロサンゼルスに到着すると、再び土曜の朝、まだ旅行の初日で得した気分になる。レンタカーは、ピカピカの真赤な"NEON"で、なんだか恥ずかしい。もっと渋い車はないのかとつぶやきつつの出発だ。ロサンゼルスの町では、REIで買物したのみ。その後は、ひたすらハイウェイを飛ばした。目的地までは、3時間もあれば到着する距離だ。ジョシュアの町は小さいので、手前のユッカバレーという町のスーパーで買物をする(食料と水タンクをたくさん)。この地域は砂漠なので、ジョシュアのキャンプ場にもちろん水はない。
夕方近く5jの入園料を払い、国立公園のゲートをくぐる。そこには、あのジョシュアの木の不思議な世界が広がっていた。公園内にキャンプ場はいくつもあるが、週末とあって、どこもいっぱい。サイト数が決められているため、融通が利かない。結局はフランス人の世話になって、ライアンキャンプ場に落ちついた。
岩とジョシュアツリーと夕暮れと、最高のロケーションに包まれて、夢の中にいるような気持ちで長い一日が終わった。(時差ぼけと飛行機酔いのため、かなりボーとしていた)
メモ:LA〜JT 140mile ≒ 224km

4/29(日)(ジョシュア クライミング初日)
早朝、ライアンキャンプ場から歩いて行けるHead stone Rockを登った。
1.SW Corner 5.6☆☆☆
2. Cryptic 5.8☆☆☆
5.10以下でなぜこんなに手強いの?初日にはもってこいの充実したルートだった。
 キャンプ場に戻り今度は車で出かける。近場のSeep passのHall of Horrorsへ、車で10分ほどだ。
3.Lazy Day  5.7☆☆
 お手軽に取付けるクラックルートだが、しっかり奮闘してしまった。
4.Garden Angel 5.10a☆☆
 フェース系好ルート。JTではグレードが10台に上がると非常に厳しい。しだいに太陽が高くなって来て、ジリジリと凄い日差しでやられてしまいそうになる。日影を求めてこの岩の裏面(東面)に回り込んだ。
5.Nurn's Romp 5.8☆☆
長いクラックルート。ここJTには、この手のナイスルートが山のようにあるのだ!(本当のところ、フェースルートも登りたいけど、勇気がなくて、クラックしかやれないヘボクライマーの私…。)



SW Corner 5.6
 昼にはキャンプ場へ戻り、のんびりタコスランチ。テントでのんびりした後は、ジョシュアの町を偵察しに行くことにした。コヨーテコーナーという土産物屋で水を汲ませてもらい。向かいの山道具屋で、赤スリッパを購入(品揃えは良い)。町からキャンプ場へ戻る途中、Lost HorseのHemingway Buttressへ寄ることに、ここはアプローチが短く、名ルートが集中しているエリアだ。
6.Poodles Are People Too 5.10b☆☆☆
 
プードルだって人間だ!(なんじゃそれ?)長いシンクラックをフォローで登り、二人バットレスの上に立ったが、、「どこから降りればいいの…」。下降支点をひっしに探しあて、暗くなる前には終了した。

4/30(月)(いよいよ不思議の世界へ)
朝5時半起きで、リアルヒドゥンバレーに出かけた。岩と砂ぼこりの世界から、いくつかの細い小道を抜けると、緑の草原と岩の世界に変わる。ここがまさに、リアルヒドゥンバレー。
小道に従ってしばらく行くと、のっぺりとした岩の塊を発見、Houser Buttressだ。
7.Loose Lady 5.9+☆☆☆☆
ここの看板ルートである。取付きに行き着くために、岩のトンネルや階段を通り抜けるがこれがまた面白い。ボルト間隔が広めのスラブルートで、私にリードする勇気はなく、フォローで登った。
 小道をもどり、また別の隠れ家に向かう。迷路のように不思議な岩の世界が広がる。
8.Sail Away 5.8☆☆☆☆
ヒドンタワーに走るクラックの人気ルート。次から次にクライマーがやって来て順番待ちができるほどのルートだ。
9.Illusion Dweller 5.10b☆☆☆☆☆
有名五つ星ルート。素晴らしい内容だったと思う。この頃から井土さんは、昔のタモリの深夜番組を思い出し、「三つぼ尻」「五つぼ尻」と繰り返し、一人で喜んでいいた。



Loose Lady 5.9+
 この日も日差しがきつく、キャンプ場に戻ると、日影をさがして、岩穴に潜り込んだ。その中でスパムバーガーを食べて、お昼寝もした。穴に住んでいる動物みたいで楽しくなる。
午後は、Lost Horseエリアのロックガーデンバレーに出かけた。今までのアプローチとは違い、道なき谷間を上に向かって詰めて行く。暑くてきつくて、どこまで行ってもルートが現れない。今までずっとスムーズに効率良く来ていたので、ちょっとした苛立ちからケンカをしてしまった。
10.Doable Dogleg 5.7☆☆☆
11.Smithereens 5.9☆☆☆
12.Lewd and Lascivious conduct 5.10cR☆ (TR)

井土さんは、ここのルートはどれもおもしろいと絶賛していたが、私はフテクサレていたので、ルートの記憶はなく、非常に後悔している。
車にもどりシャワーに行こうと、町へ急いだが、コヨーテコーナーはすでに閉まっていた。気をとり直して、ユッカバレーのレストランへ向かった。井土さんご推薦のチェーン店「Sizzler」。


Illusion Dweller 5.10b
 ここのサラダバーは8jで食べ放題。まず、野菜たっぷりの濃厚ビーフスープ、ドライカレーとレタスにチーズトマトをはさんだタコス、揚げたての鳥のから揚げ、そして大好きなスイカが山盛りに!!旅行中、最高に盛り上がった夜でした。

5/1(火)(サドルロックへ)
 5時起床。目指すはサドルロック。キャンプ場近くのSheep Passエリアにある大きな岩で、スラブの名ルートが何本もひかれている。
13.Walk on the wild side(2p)5.7+☆☆☆☆

広いスラブの海が広がり、次のボルトが遠くに見えたり、見えなかったり…方向を間違えて進んでしまうと、非常に恐ろしいことになる。岩の弱点を縫うように進むので、ロープの流れが悪くなり、井土さんは、とてもドキドキのクライミングを楽しめたようだ。長いスラブの航海を終えて取付きに戻ると、オレンジ色の蛇が、ロープバックの中にいて驚かされた。
その後は、対岸にあるHall of horrorsを再び訪れた。
14.Exorcist 5.10a☆☆☆
 下部はクラックで厳しいムーブ、上部はガバガバランナウトフェース。貴重な名ルートだが、トップロープでもテンションを入れてしまった私は、一人海の底まで沈み込んでしまった。う、うるる〜
太陽が真上にきたので、町のシャワーに走り、一週間ぶりにきれいサッパリとした。コインランドリーで洗濯にかかろうとすると、洗剤の自販機が故障中。いつもなら持ってくるのに、今回に限って…。私達の様子を見ていた(デブい)おばちゃんに洗剤をわけてもらい、そのかわりに、おばちゃんがちょっと出かける間、洗濯ものを見張ることになった。



落ち込むひいちゃん 
町からの帰り、再び夕暮れのヘミングウェイバットレスを訪れた。
15.White Lighting 5.7☆☆☆
海の底に沈んでしまった気持ちをなんとかするためにも、苦手な広めクラック(青キャメサイズ)にトライ。どうにか自分の気持ちに打ち勝つことができたような感じ。
16.Overseer 5.9☆☆☆
楽しいクラックルートに井土さんトライ。
この壁には、すばらしいクラックルートが何本も走っている。日本にもって帰ることができたらどんなにいいだろうか。

5/2(水)(レスト日 ジョシュアの端まで)
 朝ゆっくり起きて、インスタントのリゾットを食べて、再び寝に入ったZzz…。
9時ごろ起きて、国立公園内をジョシュアの南の端までドライブした。ヨセミテなどと比べて、国立公園に昇格した歴史が浅いため、ビジターセンターや土産物屋はあまり充実していない。公園の南側はジョシュアの木も少なく、ただ広大な景色が広がっている。
 優雅なレスト日を彩るために、町のカフェに立ち寄り、エスプレッソを注文してみた。本物の美味しいコーヒーが出てきて、リッチな気分になった。

5/3(木)(リアルヒドゥンバレー〜エコーロック)
 旅の後半になると、決まって寂しい気持ちがおそってくる。もう一度初日にもどりたいよー。
今日も早起きして、太陽が昇る前にはヒドゥンバレーキャンプ場横の四つ星ルートを登った。

17.Double Cross 5.7+☆☆☆☆

今更ながらここのグレードは辛い。5.7で奮闘度90%
一本登ったあとは、再びリアルヒドゥンバレーに向かう。
18.Clean and Jerk 5.10c☆☆☆☆
10cのパワー系フェース状クラックで、井土さんまさかの敗退。
19.Leaping Leana 5.6☆☆
初心に返り、5.6のリナちゃんクラックに取付く。
 車でエコーロックに移動。エコーロックは大きな塊で、しかもつるんとしているので、遠くからでもすぐそれとわかる。


heart & sole 5.10a
20.Stick to What 5.9☆☆☆
井土さんトライ。ボルトが遠いスラブ、簡単ではないので、非常に危険。ドキドキクライミング
21.Stichter Quits 5.7☆☆☆
このスラブは易しめだけど、やはりめちゃめちゃランナウトしている。ここで落ちたらいったいどうなるの…。心の中でもう一人の自分と葛藤しながら登った。岩山の傾斜がゆるくなった途中に終了点があり、その上はトポで「WALK OFF→ 」と書かれている。とりあえず上の比較的平らな所にたどり着いたが、支点らしき物は何もない…。エコーロックの向かって左側の傾斜が緩いところをクライムダウンして降りたが、随分緊張させられた。
22.Heat and Sole 5.10a☆☆☆☆
エコーロックの右の方にある。微妙なバランスと緊張が続く好ルート。ホント10台となるとキビシイのだ!。
23.Touch and Go 5.9☆☆☆☆
 エコーロック対岸に、私が登る予定のタッチ&ゴーを見付けた。取付きを目指して一人駆け出したが、大きな岩を潜ったり、またいだりするが、なかなかたどり着けない。いざ取付くも、これがナイン??!と言った感じで奮闘。終了点はなく、カムで支点を作ろうとするがなかなかうまくいかない、、、。太陽はジリジリ、汗がしみて顔が痛い。最後は下降路を探してうろうろ。簡単には始められない…終われない、非常にジョシュアらしい一本でした。

今夜はジョシュアでの最後の夜。美しい月の夜だったが、明日も早いので早々と眠りについた。が…。私達にとっての最大の危機はその夜中にやって来た。隣のサイトに本場のヤンキーがド派手なアメ車で乗り付けて、大騒ぎを始めたのだ。


Touch & Go 5.9
張りきるひいちゃん
5/4(金)(ワンダーランドへ そしてさよならJT)
さすがのヤンキーも朝方には眠りについたようだ。今日は、ジョシュア最終日。まだ暗い中、眠い目を擦っての出発となった。
ワンダーランド入り口の駐車場についたが、あまりの寒さに車から出る気になれない。しばらくの間暖房全開にして、体を温めてから外にでた。アストロドームを目指して、トレールを歩く。途中道が分かりにくいところや、分かれ道などもあり、不安になりながら進んだ。しばらく行くと、岩だらけの世界に変わった。こんな岩だらけの世界の中で、一つの岩を見つけられるのか、さらに不安になった。井土さんがアストロドームを発見して、取り付きを目指すが、踏み跡はほとんどない。非常に悪いアプローチで、時間がかかったが、お目当てのソリッドゴールドは、写真で見ていたのですぐにそれとわかった。
24.Solid Gold 5.10a(2p)☆☆☆☆
やはりボルト間隔は遠めで、ホールドもないように見える。素晴らしいルートで、気合の入った登りが出来てよかったね、井土さん。
 せっかくここまで来たのだからもう一本登ろうと、私がリードできそうなルートを探した。太陽は高くなり、ジリジリと日差しは強い。井土さんは、日影に腰をおろして動かなくなってしまったので、一人で取付きを探しに行った。真直ぐ走るクラックは見えているが、取付きまでの道のりは、パズルを解いて行くようだ。行けそうで行けない。行けなさそうで行ける。いくつもの岩の間を縫うようにして、ようやく取付きにたどり着いた。
25.Mental Physics 5.7+(2p)☆☆☆☆
岩のてっぺんからは、ワンダーランドが見渡せる。どこまでも岩だけの世界が広がる。ここがジョシュアの心臓部だという。ここがワンダーランド…  。
帰り道、朝は気付かなかった変な形の岩や、真っ赤なサボテンの花。寄り道したくなる材料は次から次に出てくる。でも急ごう、まだまだ登りたいルートは残っているし私達には時間がない。車に乗り込むと、今度は冷房全開でキャンプ場に戻った。朝の寒さが嘘のようだ。

ふと見ると、テーブルの上に置いてあった水タンクから水が漏れていた。何かにかじられた跡がある。あいつだ!リスめ!ビスケットとパワーバーも無くなっている。もしかして、テントの中も…。ちょっとした隙間から入り込んだのだ。うまくもないのにマットをかじり、リッジレストには、おしっこの池が出来ていた。さらに、井土さんのシュラフにもしっこが…。最終日でまだよかったじゃない、、、。私達が騒いでいる横に、犯人のリスは、またもえさ探しにやって来た。井土さんが、血走った目で、一度はダンボールに閉じ込めたが、結局逃げて行った。かけて行くリスに空箱を投げ付ける井土さんの背中をみて、私はなんだかおかしかった。



Solid Gold 5.10a


Mental Phtsics 5.7
 車に全てを詰め込んで、最後の目的地スプリットロックに向かう。
26.Rubicon 5.10d☆☆☆☆
最後を飾るにふさわしい、クラックの名ルートだ。傷だらけになった二人の手を並べて記念写真を撮った。正面に見えるBird of Fireも登りたい一本だけど、「もう充分、いい時間だ帰ろうよ」。そして私たちはジョシュアをあとにした。 さよならJT。
 途中買物などして、ロサンゼルスに向かった。夕飯は定番となった『デルタコ』で、ソフトチキンタコを注文した。硬いトウモロコシの粉の皮が好きな人は"アルティメット"と書かれたタコスを選べばよい。
空港近くのハワードジョンソンホテルに到着したのは、夜11時頃。数日ぶりのお風呂と枕とシーツはとても快適で、ゆっくり眠ることができた。

 5/5(土)(ロサンゼルス〜上空)
 朝7時半起床。荷物を整理して早めにホテルを出た。車を返してからバスで空港へ、ドルの現金が残っていたので、空港内の洒落たレストランへ入り遅い朝食をとることにした(2人で$35ぐらい)。食べ終わった頃に、にこやかなウエーターがやって来て、「私達は、チップをいただいております…」と書かれた紙を渡された。もちろんそのまま逃げた。やはり、こういった店に寄るのはやめよう。12:30出発の予定が、随分待たされ13:20出発。ソウルでの乗り換え時間が気になる。再び飛行機酔いの悪夢を思い出すが、しっかり飲んだ酔い止めが効いたのか、ご飯が運ばれた時以外はずっと眠ることが出来た。その爆睡ぶりに、井土さんはずいぶん関心していた。

5/6(日)(上空〜ソウル〜名古屋空港)
 眠り続けている間に、すでに日曜の夕方となってしまった。18:50ソウル発の飛行に乗換えるのに、私達を乗せた飛行機が到着した時刻が、18:45(何と5分前!!)さてどうなることやらと思いながら飛行機を下りると、日本語の上手な大韓のスタッフが、「名古屋行きの井土さまいらっしゃいますか?」と待ちわびていた。私達が寄って行くと、こちらにお急ぎ下さいとものすごスピードで走り出した。途中ついて行けないほどの早さで、関係者専用らしき裏道を通り、すべりこみセーフで出発した。ソウル−名古屋間も、もちろん、グウグウ寝てしまった、、、。名古屋に到着してボーと荷物を待つが、いつまでたっても出て来ない。どうやら私達の荷物は乗換えが出来ずに韓国にぽつんと残されたようだ。ラッキーかな?重い荷物に苦しまず、手ぶらで帰ることができのた。
帰りの名鉄電車の中でもうつらうつら。首がうしろ側にたおれた瞬間に口が開いて「ポァッ」と音をたててしまった。その音にびっくりして目が覚めると、もう有松駅だった。いったい何時間寝たら気が済むのか!

今も、ジョシュアの景色とクライミングの日々は、まるで、夢の中の出来事だったような、そんな気がしている。