メンバー 大関、蔵元 日程 2004年2月14日~15日 笠ヶ岳南にある錫杖岳は古くより信仰の山として知られているがその東面に聳える前衛フェースは古典アルパインクライミングの岩場として人気が高い。約300メートルの巨壁は威圧的に思えるが入門ルートから人工の難度が高いもの、最近ではアメリカンエイドのルートの開かれアプローチも1時間半位と短い為夏、秋は多くのクライマーを迎える。 壁が凍てつく冬季も他の北アルプスの岩場と比べ、アプローチ、標高、東面に位置することから冬季登攀を挑もうとするクライマーにとっては取り付き易い条件が揃っている。 とはいっても気象条件が厳しければ壁は氷と雪に覆われ本格的な冬壁の技術を有することには変わりはない。東面に位置するだけあってルートによっては雪の付着が激しく、降雪中は各ルンゼとも雪崩の巣となる。凹角やチムニーの残地も雪や氷で埋まりかなり手応えを有する。それ故フリー主体のルートは登攀技術自体難度の高いものとなり充実した内容を約束してくれる。 今回は錫杖でも人気の高い左房カンテに先月と同じく蔵元君と挑むことにした。 |
2月14日 昨晩は到着が遅くなったので少し遅めに起床。 気温は低いが穂高は晴れていて小春日和のような霞空。 ここ数日の暖かさで雪も沈殿して木々の雪も落ちている。 荷物をまとめると8時過ぎ出発。
4P目 雪で斜面になったバンドをトラバースして中間部チムニーへ。 蔵元君いざ取り付くがチムニー内部半分は雪と氷で埋まり全然プロテクションが取れない。 オイラが代わって発進。 前ヅメをベルグラに引っ掛けバックアンドフットでズリズリ上がる。 5メートルほど上がるもやはり残地なし。幅15センチほどの氷柱を(折れるなよー)と願い強引に上がると何とか岩と壁の間にキャメが利き一安心。その後すぐ中間当たりにスリングが垂れていたがそれから上は同じく何も取れずかなりランアウト。 バンドへの最後の乗っ越しがかなり悪かったのでどうしてもランナーを取りたかったがチムニー内部の岩は半分以上雪と氷で埋まっており取れそうもない。 もし落ちれば下の岩に激突することは避けられないので20分以上悪戦苦闘して黄色のエイリアンを岩角に引っ掛けアドレナリン全開でマントリング返してバンドに這い出る。 荷物背負ってはフォローで登るのも厳しいのでこのピッチは荷揚げすることに。 いつの間にか辺りは厚い雲に覆われ雪が舞い始めた。
夏はテントが張れそうな位広いテラスも雪で斜面になっており設営するにはかなりの土方作業が必要。しかも雪と風の舞い込みが激しくビバークするにはちと悪条件。 上がってくる蔵元君に洞穴の様子を見てもらうとそっちの方が快適らしい。 ロープをFIXすると洞穴まで戻る。 辺りはかなり暗くなっていた。 洞穴内部は蔵元君が大体整地してくれたのでもう少し掘り下げるとギアを整理してツエルトを張る。 外に比べると直接雪が降ってこないのでかなり助かる。 しかし降雪が激しい為火を炊くとあっという間にツエルト内はぬれ始めた。まあこればかしは仕方がない。 夜はひたすら降雪が続き洞穴内も雪の舞い込みが激しく狭いツエルトは余計狭くなった。 おまけにペラペラの夏用シェラフでは当然寒くて寝付けない。 次の日は朝から吹雪。壁からはスノーシャワーが絶えず落ちて完全冬壁模様。 残すところ2Pなので取り合えず登攀決行。 雪まみれになった道具とギアを片付け登攀開始。 FIXした7P目の終了点まで登り蔵元君が最終チムニーに取り付く。
4時前中尾温泉口の駐車場に戻る。 下界も夕べから激しい雪だったらしく蔵元君の車は半分近く埋まっていた。 雪降りしきる中片付けを済ませを同じく栃尾の荒神の湯に浸かって帰名。 湯がぬる過ぎて帰りは風邪を引きそうだった。 感想 前衛フェースの中ではメジャールートだけあって冬でもフリー、人工、アイスもどき、雪壁と変化ある登攀が楽しめ面白いですね。でも冬のチムニーは恐ろしいです。 雪が一番多い2月から3月位が一番手応えがあると思いますが降雪が激しい場合ルンゼや取り付き付近は雪崩の危険が高いので慎重に行動した方がいいでしょう。 取り合えず冬壁は終わったし来月はいよいよ雪稜とキノコ崩しか? |