東海山岳会 国内山行


メンバー 千田、大関
日程 2004年3月19日~20日
新穂高の左股林道から穴毛谷を目にするとまず目に付くのは第一尾根の巨大な岩峰だろう。
アプローチが短く取り付きやすい尾根にもかかわらず冬季は雪崩の危険とどこから取り付いても壁を抜けなくてはならないため登られた記録は少ない。
その為殆ど残地物がなく今回我々もかなり厳しい登攀を強いられることとなった。


3月19日
昨日この時期としては珍しく下界も降雪がありひやひやの運転で新穂高に着いたのはかなり夜半になってしまった為少し遅めに起床。
空は晴れており絶好の登攀日和だ。
さっさと身支度にかかるが千田さんに渡したビーコンが全く作動しない。
年明け抜戸に出かけた時も作動せずすぐに代用品を渡して貰ったがそれも動かないとはいきなり気が滅入る羽目に…
。二人で話しあった結果雪崩の危険も少ないので登攀決行となったが出発がかなり遅くなってしまった。
林道を横切り穴毛谷に入るとゴロゴロした岩の上に雪がある為歩きにくく時折ゴジラにはまる。
一の沢取り付き手前で弱層テストをしてみる。
表層は5センチほどで既に表面は安定しているので大丈夫そうだ。
沢を詰めると先週暖かい日が続いたせいか沢は巨大なデブリで埋まっていた。
2時間ほどで大ルンゼとの分岐に到着しここで休憩を取る。
天気は小春日和で風もない。
行動食を詰め込むと一気にるんぜを詰める

ルンゼ内部はかなり凍っていてスリップは致命的だ。
アックスと前爪を利かせながら登る。
両側の尾根は凄いキノコで威圧的だ。

穂高を背に一の沢を詰める
取り付きから見上げる尾根上部は完全に壁になっており憂鬱な気分。
とにかく装備を身に着け登攀開始。
1P目
所々シェルントになった雪壁を詰めて行き抜けかけたハーケンに腐ったスリングが巻いてある岩まで。その上部の草付もトライしてみるが剥がれそうで諦める。
2P目
千田さんが左の岩から巻くが結構悪い。ナイフブレードを打ち込んで岩を超えるがその後が相当悪いらしく時間がかかる。最後のカンテへの乗り越しは激悪でバイルを岩に半掛けして超えたらしい。実際フォローでも必死だった。
3P目
ここから緑エイリアンをカンテ上部にねじ込んで右手のルンゼに振り子トラバース。
そのまま氷ともろい草付をアックス頼りに登る。所々カムで支点はとれるが岩が殆ど浮いており胃が痛い。
スラブにロストアロー打ち込んで超えるとようやく傾斜が落ちて雪面に出る。
上部の巨木で切る。

3Pの壁を抜け中間部の雪面を
フォローする千田さん
4P目
殆ど藪の壁を登るが一部被っており相当悪いらしく千田さん激落ち。
何とか赤のエイリアンで止まるが左足首を打ったようだ。
幸い怪我はないがオーバーパンツは大きくさけてしまった。
結局左の岩を直上することにしたがやはり厳しいらしくなかなか進まない。
既に日は暮れヘッドランプが頼りだ。
直上は諦め左にトラバース。ここでも振り子して何とか左側のルンゼに出る。
巨大なキノコ雪の上でピッチをきる。
5P目
隣のルンゼに合流してひたすら上部に詰める。
傾斜が落ちたルンゼの為サクサク登ってゆけたがこの時間帯ではやはり気が重い。
50メートルいっぱい。

6P目
同じく雪のルンゼを詰める。
ロープいっぱいでようやく尾根上にでる。

完全な稜線まではあと少しだが十分台地らしくなったので巨木の下を整地してツエルトを張る。
既に時計は10時近くを指していた。
風もなく木の下だけあって綺麗に整地出来たこともありツエルトの中はかなり快適。
しかし二人とも13時間行動でヘロヘロ
食事を済ませ床に就いたのは午前1時を回っていた。

3月20日
6時起床。天気は曇りで穂高はガスがかかり始めている。昨日の予報では晴れだったのにどうやら気圧の谷の影響らしい。
大きく崩れることはないので先に進みたかったが千田さんが昨日フォールした時に打った足がかなり痛むらしく続行は不可能。
あと少しの距離だったがまあ天気もあまり良くないのでそのまま同ルートを下降することにした。

尾根上から見る去年登ったに尾根。左上に
見えるのが二の沢奥壁
時間もあるのでオイラは稜線まで出て偵察。
二の沢奥壁と去年登った二尾根が良く見える。
竹ペグ懸垂したP4の巨大キノコはかなり下にある。よくよく見るとこれもまあ長い尾根だ。
クリヤ頭に続く一尾根上部は凄いキノコが待ち受けている。
これを登らずに帰るのはやはりちと心残り…

待ち受けるキノコ軍団。これを超えればクリ
ヤの頭もあと少しだったが…
残地下降支点がないのでかなり不安だったがしっかりした木が所々に生えていたので無事取り付きまで戻る。
一の沢との出合いに着く頃には小雪が舞い出した。
千田さんが足を痛めているので慎重に下るがデブリの上はやはり歩きにくい。
帰り際に見る一尾根の末端はホント威圧的でここから登ればかなりのビックルートになるのは間違いない。一度夏に偵察しようという話になった。


午後1時半過ぎ新穂高に到着。下界はボタ雪状態で路面の雪は問題なさそう。
高山につく頃には空は晴れていた。
もう雪山シーズンも終わりが近いと思うをホッとする反面やはり名残惜しい気分だった。


感想
いきなりビーコン非作動で幸先気分悪かったですがまあ無事に帰ってこれた。
しかし今期一番悪絶な登攀でした。
残地物がないというだけで精神的にかなり厳しいですが壁の悪さも一級品でした。
登攀自体半分開拓みたいでしたがローツエ帰りだけあって千田さんにはかなり助けられましたね。
今度は念入りに計画して末端からチャレンジしてみたいです。


東海山岳会 国内山行