私は自信をもってきっぱりと、「Culp-Bossier を登った」と語ることが出来ない。なぜか? このルートは、かつて CulpさんとBossierさんが組んで初登したルートなわけであるが、この二人、どこの国の人なのかよく分からないのだが、とにかく名前を発音するのが非常に難しい。Culpの方は、カルプではなく、どちらかといえばカップに近い感じで、まあ何とかなるのだが、Bossierの方は、何回教えてもらってもその発音を自分の口で再現することができないのだ。 普通のアメリカ語の発音ではない。 そんなわけで、「Culp-Bossier を登った」と語ることが出来ないのだ。 まあ、発音なんか出来なくてもクライミングにはそれほど影響しないので、登ることは出来る。 ただ、実際に登ってみて分かったことであるが、このルートの困難さは決してその発音の難しさだけではなかったのである。 |
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4:15 Trail Head 5:45 取り付き 6:30? クライミング開始 ところで私は、日本を出る前にネットなどでこのルートに関する情報をいくつか集めていた。 それらを細かく見ているうちに、奇妙なことに記事によって各ピッチの記述内容が大きく異なっていることに気づいた。 これが意味することは、おそらく何通りにもルートを取ることが出来るか、もしくは周辺の別ルートに迷い込んでしまいやすいということではないかだろうか? 正しくこのルートを辿るためには、正確なルートファインディングが不可欠と考えた。 そして当日。 「2ピッチ目は、よく似た3つの右向きコーナーのうちの真ん中を登る。1ピッチ目は左上ランペからそのコーナーの基部めがけて登っていく。」ガイドブックの記述をしっかり記憶して登りはじめたのだが・・・。 実際の1ピッチ目はいきなり結構かぶっていて、上にあるはずの「3つのコーナー」なんてひとつも見えやしない。 |
取り付き周辺 |
1ピッチ目 (コーナーなんてどこにも見えんぞ!)) |
ビレーヤーの視点からの情報も総合して、けっこうランナウトしながら、ハング下のそれらしきビレー点に這い上がる。 2ピッチ目はHiromiに行かせる。ハングを越えると確かにコーナーがあるが、そのどん詰まりは大きなハングに抑えられていて、ずっと右の方の岩角にスリングの束がぶら下がったビレー点があるという。『どうもガイドブックの記述と全然ちがうぞ・・・。』 そして3ピッチ目を上り始めて、我々が大きく右に外れてしまっていることをはっきりと認識することができた。このまま登ることはどう考えても出来なさそうだ。 しかたないので、そこから2ピッチ目の途中までラッペル。そこからコーナーの上のハングを強引に越えて、スラブを左上し、なんとか本来のルートに戻ることが出来た。これで軽く1.5時間ぐらいのロス。やはりこのルートは甘くない。 そこから壁の中ほどの大テラスまでは何とか順調に進む。そして大テラスから見あげる上部壁は、なんとも奇妙で恐ろしい壁であった。 垂直に近い傾斜から、上の方にはいくつものハングを連ね、全体にかぶっているように見える。摂理はほとんど発達していないが、とにかくデコボコで、行けども行けども何の脈略もなくガバが続いている。残置支点はビレイ点を含めまったく見当たらず、摂理がないので、ろくなプロテクションは取れない。ガバガバなので、右でも左でも好きなように登っていけるが、先を読んできっちりラインを見極めないと、15mランアウトしたところで完全に行き詰るなんてことも十分ありうる壁である。 |
2ピッチ目のビレイ(すでにルートを外れている) |
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グレードの割には非常に時間をかけて慎重に上部4ピッチを抜ける。1ピッチでRPを4個(ビレイ点含む)も使ったピッチもあり、神経をすり減らす登攀であった。 13:30 終了 14:30 取り付き 16:15 Trail head この壁は10人登れば、10通りのラインになるような気がする。 下部はもちろん上部も、はたして正しいラインを辿れたのどうかいまだに定かではない。 そんな意味でも、「私はCulp-Bossier を登った」と語ることが出来なかったりするのである。 この日はキャンプに戻って即、撤収。 ロッキーマウンテンに別れを告げて、遥かワイオミングへ向けて進路を北にとった。 |
上部のどこか |