Wyoming

Devil's Tower


デビルズタワー西壁

 ずっと以前から、「いつか必ず行く」と心に決めていた場所である。 ここに行かなければ、私のクラッククライミングのキャリアは完結しないと考えていた。
 しかし、そのような夢の場所を訪れるには、私たちは疲れすぎていた。 ロッキーでのアルパインクライミングの長いアプローチで、私は足の爪を完全にやられていて、クラックに軽く足を入れるだけで悲鳴を上げるぐらいの状態になっていたのだ。
 そんなわけで、2日間(といっても実質半日×2回)のクライミングを行い、やさしめの★★★ルートを2本、合計で6ピッチぐらい登り、頂上にも立つことができた。  まあ、たいしたものは登っていないのでよく分からないし、そんな私が言うのも何であるが、正直なところ「それほどたいした岩場でないかもしれないな」って気もちょっとしてしまう (3ピッチぐらいだし、ヨセミテやインディアンクリークや名張の名ルートと比べてしまうと・・・)。
 とはいえ、ワイオミングへの旅はなぜかワクワクするようなとても楽しいものであった。

 1964年の夏に、ロビンスがここを訪れたという確かな証拠を見つけることは出来なかったが、ここからわずか3時間ほどのNeedlesに行っているのに、ここに来ていないということはありえないだろう。ロビンスはこの岩の塊をどのように見あげたのだろうか?
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 7月14日 早朝にシャイアンのモーテルを出てから、走りっぱなしで6時間。平原の彼方に、「いぼ」のように小さくデビルズタワーが見え始めてから、さらに走ること1時間。ようやくタワーの麓にたどり着いた。
 すでに日は傾き始めており、東面のルートは影になっている。今日はまずSoler 5.9を登って、かつて宇宙人も着陸したあの頂上に立とう。
 ビジターセンターでは、毎日クライミングの届けを出さなければならないことになっている。クライミングレンジャーはとてもフレンドリーでいろいろ教えてくれた。ポイズンアイビーという、さわるとかぶれる草についての講義をうけたりしたあと、観光客に混じってアプローチを行く。15分程度ほどで取り付き到着。 
16:00クライミング開始。
 

Soler 1ピッチ目
 さて、このルート、「快適なハンドクラック」のはずであったのだが・・・。上り始めたとたんに、足先が痛くて痛くて、まともにジャムが出来ない状態であることに気付いた。ダメだ、こりゃ。
 ほとんど楽しむゆとりもなく、ひたすら痛みに耐えながら、何とか頂上に着く。頂上は、だたの草っぱらで、最高点と思しき場所に木の棒が一本立っていた。やたらと羽蟻がぶんぶん飛んでいたことを覚えている。
 こんな風にして、夢に見たデビルズタワー登頂は、あまりにもあっさりと遂げられたのである。
 

頂上の一角にて  平原にタワーの影が伸びる

南壁
 宿屋のあるSundanceという田舎町に入る。 街で唯一のまともそうな食堂に入ったのだが、これが大ヒット。 料理は、「牛肉とジャガイモ、それだけ。」といった感じの、まさに直球勝負の店なのだが、それだけに肉の食べ方、イモの食べ方を熟知しているようで、実においしかった。アメリカにいったら、えせイタリアンなどには行かずに、こうゆう店を探さなければいけないことが分かった。

 翌15日は、レストをかねて、隣のサウスダコタ州にドライブ。Needlesで一本ロビンスのルートを登ったあと、西部劇時代からの古い街 Custerで買い物したりコーヒーを飲んだりダラダラして、帰ってきてまた昨日の食堂に行った。再び大満足。

 16日 今日は午前中デビルズタワーを登ったあと、また600kmのドライブをこなしてデンバーまで戻らなければならないことになっている。
午前中影になる西壁の中で、いろいろ考えてTulgey Wood 5.10aを登ることにする。一応、上まで抜けてるルートだが、上部はもろいため、普通は3ピッチでおしまいのルートである。1、2ピッチ目はけっこうテクニカルなフィンガーで、3ピッチ目は50mいっぱいにわたってワイドハンドからフィストが延々と続くという中身の濃いものなのだが・・。
 やっぱり足先がまだ痛い。再びまったく余裕のないクライミングとなってしまった。
 日が当たり始める前に懸垂で降りて、アプローチを戻る。こうして今回のツアーのすべてのクライミングは終了した。
 

Tulgey Wood 1ピッチ目
 そんなわけで、私のデビルズタワー、クライミングはいまいちでありました。 でも、まあ、ここまで来れて本当に良かったと思う。 とても楽しかった。

 やっぱりアメリカは広くていい。次はどこに行こうかな〜。

ワイオミングからコロラドに続く道