El Capitan "Freeblast"  5.11b 10pitchs



 言わずと知れた、エルキャプのサラテウォール。その取り付きから10ピッチ目までを、オールフリーで登る企画物を Freeblast と呼ぶ。

 早々と結論から言うと、私達は 「Freeblast を登った」とは言えない。3箇所出てくる5.11台のセクションは、みなフリークライムすることが出来なかった。
 とはいえ、このラインはどうやって登ろうと、やはり素晴らしい。 というか、やはりエルキャプは素晴らしい。 「別格」という気がする。 そのことを改めて感じることが出来た。 何年も忘れてたことを、久しぶりに思い出しすことが出来た、そんな日であった。 
 
 思えば、はじめてエルキャプを登ってからもう9年になる。あの頃はノーズでレッジからレッジへの10ピッチを登るのに、朝から夕方まで頑張ってもまだ届かず、毎晩遅くまでの残業続きでヒドイもんだった。今回は荷揚げがないとは言え、同じ10ピッチを軽く昼ぐらいで終わらせられる。

夜明けの1P目

 体力的には当時には全く及ばないのは間違いないが、おれも少しは登れるようになってきてるのかな?

  9/17 5:45 camp4 出発
      6:40 登攀開始
     12:00 マンモステラス

 そんなことを考えながら、ど迫力の懸垂でマンモステラスからハートレッジに降りる。ここで、私たちは長年登ってきて「こんなことは初めて」というような大失敗を犯してしまった。懸垂のロープを抜く際に、末端の結び目を解かずに引いてしまったのだ。
抜けなくなったロープを前に呆然としていたら、ハートレッジにいたおっさんが、にやにやしながら 

「ワッタヘルアーユドゥイン?」 とか話しかけてきた。
 事情を話すと、マンモステラスからFIXされたボロそうなロープのうちの一本をさし、
 「こいつはFIXされてまだ2ヶ月ぐらいだから絶対大丈夫。これをユマールで登りな。」 といってユマールを1セット貸してくれた。
 おかげで、なんとかロープを回収。「助けてくれなかったら、大変なことになるところでした。」
を言うと、「おまえらみたいなバカのことを  Fuckinっていうんだぞ。」だと。 

4P目

5P目
真上に見えるデカいフレークがハーフダラー
(8P目)

 おっさんたちは「ハートルート」を登るそうで、レッジから真上に果てしなくのびて行くラインを、すごくうれしそうに説明してくれた。夢と希望でパンパンにはちきれそうになっている。炎天下のものすごく熱い場所いるのに、物ともせずに喜びに満ち溢れてる。

 そうだ。 このフィーリングこそがエルキャプのクライミングなんだ。
 おーー、なんか、ちょっと思い出してきたぞ。

その日の夜はカレー村のバフェーに行ったのだが、隣の席では3人組のにいちゃんたちが、ラミナートしたビッグウォールのトポを深刻そうに睨みながら、激食いしていた。やっぱり彼らも明日からの冒険にはせる夢と希望と不安でパンパンになっている。
 そうなんだ。 これがヨセミテのクライミングの素晴らしいところなんだ。 僕はこれを長いこと忘れてたんだ。

 はたして、僕にもあんな風に、もう一度エルキャプを上まで登る機会があるのだろうか? 結構難しいかもしれない。でも少なくともこの日に僕が思い出したことが、その第一歩になるのかもしれないとも思う。

 さて、一体、僕はいつまでこんなことを繰り返していくのだろうか…。

7P目


8P目 ハーフダラー


10P目