North Dome "Crest Jewel"  5.10a 10pitchs



 ヴァレーフロアより遥か上、ワシントンコラムの上に、帽子のように乗っかった丸いドームがある。これがノースドーム。下から見ると小さく見えるし、誰もがその存在を知っているにも関わらず、もうひとつ存在感の薄い岩で、あまり登ったという話を聞かない。だいたい、どうやって行けば良いのかも良くわからない。
 だが、このノースドームの巨大な南壁には、「このタイプのルートで、このグレードとしては、Best climb on the planet」と評される名ルート Crest Jewel  がある。
 この 「on the planet」 という評価は、スーパートポに書いてあったぐらいだから、相当に大げさなものだとしても、概してこのルートの評価は高い。
  では、なぜあまり登られないのか? その理由ははアプローチにある。とっても遠いのである。

  ノースドーム南壁のルートに取り付くには、3つのアプローチが考え得る。
@ノースドームの下にある、ロイアルアーチルートという簡単だけど15ピッチぐらいある奴を登って取り付く。
Aワシントンコラムの下降に使われるノースドームガリーをゴリゴリ登り返す。
Bトーラミメドーズに向かう道路の途中の、 Porcupine Creek Trail Head という所から   約8kmのハイキングの後、分かりにくスラブを下って取り付く。
 いずれにしても大変で、最低でも3時間以上はかかるという物だ。

            3ピッチ目



           5ピッチ目

 この中から、我々はBの方法、すなわち車でヴァレーを抜け出して、山の上に回り混んで、下ってノースドームに取り付くという方法を選んだ。

8/13 AM3:00 キャンプ4を出発
       4:00 Trail Head (Parking)
       6:40 取り付き
実質アプローチは、2時間40分ということになるが、これは大平さんが事前に行っていた下見があったからこそ成せる技であろう。初見なら、4時間ぐらいで見積もっておいたほうが良いかもしれない。
 さて、ルートの内容であるが、随所に登場する右上ダイクをつなげながら、ひたすら見ての通りのスラブを登っていくもので、スラブ好き、広いところが好きな人にはたまらないルートだと思う。

           7ピッチ目
グレードは、5.8〜10aの間にまとまっており、やさしいところではそれなりにランアウトするので、ダレるピッチがなく、中身は濃い。とはいっても、危険なほどのランアウトではない。 グレードは、日本の物と比べ違和感無し。ただ、場所によっては相当にフリクションが悪くつるつるで、だいたいそうゆうピッチが核心となっている。慣れてないと難しく感じるかもしれない。
      9:00 終了
     11:50 Trail Head
     13:30 キャンプ4
駆けあがる様に登って、登攀時間はちょうど3時間。 ヨセミテの5.10台の10ピッチのルートとしては、これほど体力的な負担の少ないルートは
滅多にないのではないかと思う。
 そして、ヘタするとルート自体より印象的だったのは、ノースドーム頂上あたりからの景色。これは素晴らしい。トゥオラミあたりの雄大な景色には負けるのかもしれないけど、ヴァレーの中しか知らない人なら、アプローチだけでも充分感動すると思う。こんな良い所は無いと思った。

 アプローチで下っている分、帰りは登りになる。時差ぼけで睡眠不足だったので、炎天下の登りはちょっとこたえた。 そんなわけで、帰りの車では速攻で寝てしまった。まさか大平さんも運転しながら寝ていたとは、つゆ知らずに・・・。

8ピッチ目 
下に見える尾根はワシントンコラムの頂上


           終了点

ノースドームへのアプローチは、こんな感じ。