東海山岳会 国内山行

2017/6/21

「6/19-20 滝谷第四尾根(下から)」  山行報告 無雪期アルパイン
どうも久しぶりのiwaです。
こちらも久しぶりのtokuと滝谷第四尾根を登ってきました。
前々から思っていたんですが、うちの会のブログって長文なの多いですよね。

ということで、今回も長文になりそうなので覚悟してください。

滝谷というと一般的には北穂高や涸沢をベースにしていくことが多いと思うんですが、「それってどうなんだ?」とずっと思ってました。
わざわざ落石の多いC沢を下り、第三尾根を横切り取り付くのに違和感を感じてました。
なにより上からアプロ―チして何が『登山』だと。

そんな考えに同調してくれたtokuと去年の9月に一度計画しましたが、天候不良で中止。
一冬越えてやっと行くことが出来ました。

6/18
2人とも夜まで仕事だったので仮眠を取りつつ22:30に名古屋発。
交代で運転して26:30頃に新穂高の駐車場着で仮眠。

6/19
1時間ほど仮眠のあと準備をして、4時出発。

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全然寝れてないので眠いですが出発

寝不足で体は重いが、寒いので早めのペースで歩き出す。
白出沢出合に着くころにはヘッドランプはいらないくらい明るくなって小休止。
滝谷避難小屋で大休憩とエネルギー補給。
歩き出すとすぐに雪渓になるが斜度もないのでツボ足で歩いていくと、すぐに雄滝が見える。

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標高差では200mほどあるがすごく近く見える

歩き出して30分程で雄滝到着。
恐る恐るシュルンドの淵まで行って偵察。
・・・
・・・
・・・
どこもつながってなーーーい!
まぁ、滝の傍ですしそうだよね。


しばらく二人でウロウロしながらルートを探しましたが、歩いていけそうなところは見つけられず。
結局、滝の右岸に懸垂しながら壁に乗り移る。
支点はスノーボラード。
まだ雪が緩む前でよかった。
念のためスタンディングアックスビレイでバックアップ。

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こんな風に・・・

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乗り移る

乗り移った岩棚から雪渓の底までは10mはありそうな空間が・・・。
恐ろしい。

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吸い込まれそうな空間

滝の轟音と合わさってすごい威圧感。
40分ほどかかってしまった。

腐ったロープが束になった支点を見つけたのでカムで補強してビレイ点として雄滝右岸を登る。

3ピッチロ―プを出したが、3ピッチ目はなくてもいいかも。
1ピッチ目は3級ほど。
2ピッチ目は脆いブッシュ帯。
3ピッチ目は踏みあとをトラバースだが、右側は滝つぼに向かって切れ落ちてる。念のためスタカットした。

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意外に悪い雄滝の巻き

雄滝の落ち口からはアイゼンをつけて登りだす。
スノーブリッジを渡り,急登を30分程登ると滑滝が出てくる。
直下のゴルジュは立ち止まらず一気に登りきる。

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いつ落石が来てもおかしくない

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滑滝は右岸に渡りそのままトラバース

このころから陽が当たりだし暑くなってくる。
雪渓も緩んできて歩きづらくなる。

雪渓上には落石が沢山あり、嫌でも滝谷の中にいることを意識させられる。
落石の通り道を避けながらさらに30分ほど登ると沢の合流点に着く。
正面に目的の第四尾根の末端が見える。

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吸い込まれそうな景色を目の前に息をのむ

だが、ここで重要なことに気づく。
水がない。
僕らは軽量化の為、110gのガスしか持っていない。
水は最上部の滑滝で汲んでいく予定で、雪を溶かすつもりはなかった。
しかし滑滝はほとんど雪の下。
滝はシュルンドから離れていてとても汲むことはできない。

・・・
苦肉の策として、とりあえず残っている水に雪を入れて太陽熱で溶かす作戦。
その後も、水場を探しながらも雪渓を詰めていく。

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作戦その1 太陽さんお願いします作戦

C沢に入り、第四尾根を右手に見ながら登っていく。
しかし水場はない。
時間には余裕があったので雪渓から垂れる水を集める作戦。
しかし、あまりにも時間がかかりすぎる。
2人で30分ほど頑張るも集められたのは50cc程か・・・。
ダメだこりゃ。

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作戦その2 水滴も積もれば川となる作戦

2時間頑張ったとしても必要分には全然届かない。
ふと地図を見てみるとC沢右俣と左俣の合流点少し下に滝マーク。
水が汲めると信じて行ってみる事に。

しばらくして水音が!
やったー!水が汲めるー!
大きな岩の下から雪渓へ潜り込み用意した水筒一杯に水を汲む。

これで不安材料はなくなりあとはスノーコルへ一直線。
沢は一度小さく左に曲がりまた右へ。
1時間程かけてC沢分岐点。

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ここまでくればスノーコルは目の前

最後の急登を登りスノーコルに12:00着。
ずっと急登を登ってきた足は悲鳴を上げていたが滝谷の岩に囲まれ、気持ちがいい。
やっと落ち着いてエネルギー補給ができる。

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疲れと寝不足と太陽の暖かさと景色の良さで思わず昼寝したくなる

予定ではここで今日の行動は終了だが、翌日の天気が不安だったのでビバークできそうなCカンテ基部まで行動続行。
装備を整えてスノーコルから100m程簡単なリッジを登ったところでビレイ点をつくり登攀開始。

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疲れてるけど最高の気分

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Bカンテを登るtoku

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ホールドが乏しいBカンテ

全体的にカムやナッツが使えるクラックが多く岩も思ってたよりは安定していた。
だけど丁度いいところに浮石があったりするのでチェックは欠かせない。

2時間ほど登って15:00にCカンテ基部に到着。
なんとかテント一張りといった感じのスペース。
普通にビバークするだけなら3人は横になれそう。

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少しでも風を防ごうと試行錯誤の結果

今日のホテルを作ったらそれぞれ思い思いのに過ごす。
滝谷の壁に囲まれて槍も見えてさらに最高の天気とくれば、もう何もいうことのない五つ星ホテルでしょう。
とりあえず宿が確保できて安心したら強烈な眠気が・・・iwaはとりあえずひと眠り。
1時間ほど寝て起きてみたらパンツ一丁の変態がいたのでびっくりした。

ご飯を食べて横になるとまた眠気が。

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笠ヶ岳に沈む夕日を見ながら眠りに落ちる

さすがに寝づらくて夜中に何度も起きたけどその度に満点の星空が見えてまた眠りに落ちるの繰り返し。
これだけでもここに来た価値あるなぁと思う。


6/20
3:00起床。
朝ごはんを食べて出発しようとするもあまりの寒さに動けず。
1時間出発を遅らせる。
お世話になったホテルを撤収して5:20行動開始。
簡単なリッジを10m程進みCカンテの登攀。
お約束のハーケンをナッツで補強。

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補強中のiwa

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補強後の支点 アングル(残置)+ナッツ2個です

6ピッチ目は浮石の多い凹角。
凹角というかルンゼ。
浮石が多いというかほとんど浮石。
一手一手一歩一歩チェックしないとビレイヤーが危ない。
落石厳禁のピッチ。
だけど頭上に見える巨大なピナクル目指して50m一気に登る登りごたえのあるピッチ。

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ボロボロの凹角からハングを右へ回り込みピナクルの裏側へなんとも楽しいピッチ

もう1ピッチ登りツルムの左肩へ。
昨日の変態がすごいところでビレイしていてまたびっくり。
そこ流石に違うんじゃない?と思ったがもうビレイしてるので仕方ない。

本来の懸垂点を探してウロウロしてみるが見つけられず、結局それを使うことに。
幸いテラスになっていて安定しているので安心して懸垂準備。

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間違えた懸垂支点は高さから冬用だと思われる tokuはこれでハンギングビレイしてた

懸垂はテラスから25m程。
懸垂中に本来の懸垂点を少し下のレッジで発見。
テラスに上がらず向かって左に降りていけばいいようだけど浮石が多そう。

ツルムのコルは泊まれるとかいう情報もあったけど斜めだし狭いし居心地悪そう。

8P目はクラックからチムニー。
ホールド豊富で気持ちよく登れる。
だけど浮石ガバがあるので要注意。
すごい持ちたい衝動かられる。
このピッチは短くて20m弱。
あまりに短いので次のカンテを1段上がってビレイ。
目の前には最後の核心の被ったカンテが。
・・・tokuさんゴメン。

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8P目の出だし クラックが発達していて快適なクライミング

9P目はいわゆるルートの核心。
5.10aとか言われてるけど実際はⅤ級くらい?
フォローでロープが引っかかって上がりきれず一度クライムダウンしたりして危なかったけどムーブそのものはそんなに難しくない。
岩のリッジを25m程進んで9:00登攀終了。

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登攀終了 自然と笑顔がこぼれる

満足感に浸りながら休憩。
ギアの整理をして縦走路まではⅠ級程度だと思うが、ルートの取り方によってはもっと悪くなると思う。

縦走路に出ると涸沢側が見え、前穂北尾根がカッコいい。
来年3月に行こうとtokuと話しながら涸沢岳目指し歩く。

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前穂高北尾根

縦走路とは言え鎖場が続きまだまだ気が抜けない。
そして意外と遠い。
アップダウンを繰り返し10:30涸沢岳山頂。

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冬は一面雪だったなぁと思い出す

20分ほどで穂高岳山荘。
静かな穂高岳山荘の横をとおり白出沢を下る。
すぐに雪渓となりアイゼンをつけるが、表面が緩んだ雪渓はとんでもなく下りずらい。
アイゼンが全然効かず苦労する。
登山道は一度白出沢を離れ樹林へ。
滝を巻いて再び沢へ。
雪渓が途切れる前に登山道へ復帰し森の中を下ること30分で林道と合流。

最後のエネルギー補給をしてあとは林道をひたすら下り車を目指す。
林道の下りはいつもだが、反省会と次どこ行こうと話は尽きない。
というか話してないと長くてやってられない。

14:30に駐車場着。
片付けもそこそこに温泉へ直行。

今回はひがくの湯。
錫杖岳を見ながらのんびりした後はお決まりの大盛飯。

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期間限定「ジャンボチキンカツ定食」もちろん大盛で注文 カツは皿一杯にのってました

今回色々試したことや、経験したことは非常に収穫になった。
これをこれからの山行に活かしていきたい。

一番強く思ったことは、「やっぱり山は下から登るのが一番だよね。」ってこと。

追記 toku
完登した時は、今回のスタイルに満足していたし、たくさんの経験ができたことに心から喜びを感じていました。
でも、ちょっと残置支点を使いすぎていたと言うか、自分の精神力の弱さの為に頼っていた部分が大きかったと、ふと考えていました。
下山してから、たまたま私の憧れるクライマーと話しをする機会があり、その方の持論をいろいろ聞かせて頂きました。
氏は、谷川岳や穂高岳でも素晴らしいクライミングをされている方ですので、私の現状をお話しするのはちょっと気がひけるものがありました。
まず、谷川岳一ノ倉沢南稜を上に抜けずに懸垂で降りた事を伝えると、『それはダメだよ。上に抜けないと』と。
まさに、その通りですね。
また、『残置支点』の話しにもなり、氏は『残置を使うか使わないかで、面白さは全然違うよね』とおっしゃっていました。
もちろん、安全との兼ね合いもありますが、今回のようなクライミング自体に余裕のあるルートでは、極力ナチュラルプロテクションで登っていけれるようにならないと、いつまでも弱いままだと反省しました。
それが出来ないと、よりレベルの高い冒険的な場所にはいけないですね。
さて、気持ちを切り替えて、これからも日々頑張ろう!


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