東海山岳会 国内山行

2017/2/20

「2/18 縫ヶ原山南稜(南面Ⅱ稜)」  山行報告 雪山
(この記事は続き物になってます。
前の記事を参照ください。)

今回のルートのことを何と呼ぶかは悩ましい。縫ヶ原山の山頂から50mのところに突き上げる尾根なので、縫ヶ原山南稜というのは妥当なところだとは思う。しかしweb上に記録がないとは言え、誰かは登っていてすでに別の名前で呼ばれているかもしれない。それにこの尾根の左右には他にも面白そうな尾根がいろいろあるので、もうちょっと識別しやすい名前も良いかもしれない。

なので、とりあえずこんな風に名前を付けてみた。


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今回登ったのは、真ん中の「縫ヶ原山南面Ⅱ稜」となります。
雪が締まりそうな日を選んで、メールで声かけたらわらわらと人が集まって、6人で行てきました。
G、しも、kura、Casa子、taka子、キスケ


林道除雪の終点でわかんをつけて、8時頃出発。
取付きは、784m標高点に東から上がる尾根を選びました。そこまでは川沿いを進みます。雪は重いけど締まってて、スピードはあがり、約1時間で取付き。途中の渡渉を心配していた場所は、広い河原状になっていて、うまくスノーブリッジを渡ることが出来ました。

尾根の前半は、薮もなくすっきりしたブナの尾根ですが、まあ平凡です。

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交代しながらラッセルも、6人いるとだいぶ楽だ。

しっかし、良くしゃべるパーティーだった。しゃべりに命をかけてるような人が3人ぐらいいる上に、みんなわけの分からないところに連れてこられた高揚感からか、普段の1.5倍増しぐらいのパワーでしゃべっている。何人かが同時にしゃべるので、聞いてても何を言ってるかすら分からない。まさに飲み会状態だった。

やがて1091mの台地にあがると、初めて南面の全貌が見渡せた。

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ここはテントでも張って、2~3日のんびりしたいような良い場所だった。

ここでハーネスを付けたりギアの準備をしたり。

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1091mから見た南面

この段階ではまだどこかが登れるのか、さっぱり分かっていなかった。「ヒノキゲート」(真ん中の黒い塊が2個並んでるところ)までははっきり尾根がつながっているが、その上は壁っぽくなってるように見える。ゲートを過ぎたところから、左に大きくトラバースして、大木の所から雪壁を登るかなあ??

しかし実際に行ってみて分かったことだが、活路は正面突破にあった。
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登ったライン

ま、考えてても分からないので、とりあえず気合を入れて出発!


1091mからすぐ先は見事な雪稜だった。

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Photo by Taka子

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こういう予想もしてないものが出てくると嬉しい。
前日の雨のせいか、ここだけスカスカの雪質で、ちょっと怖かった。

しばらくラッセルを頑張ると、ヒノキゲートが近づいてくる。これは下の駐車場所からもはっきり分かる顕著な特徴だ。

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と、ゲートの中に何やら動く物影が!

あっ!カモシカ! それも3匹! (写真は撮れなかった)

しばらく不安げこちらの様子をうかがっていたが、そのうちどこかに行ってしまった。
ひょっとするとゲートの守り人たちだったのかもしれない。
ここから先は精霊の国だろうか?
神妙な気持ちでゲートを通過。

ゲートの中は急な雪壁で、下が岩になっていてちょっと悪かったので、ロープを投げて後続を確保する。

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ゲートを越えたところで、初めて上の様子がはっきりと分かった。

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登れそうな雪の尾根が頂稜までしっかり続いていて、しかもそこだけ雪庇が薄い。
これは行ける!

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最後の壁状の場所はtaka子が行く

これを越えると、「天国への階段」
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傾斜も緩んで50mいっぱいで雪庇の基部へ
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雪庇は2m弱ぐらい。左右を見ると倍以上ある場所もあるので、ここは弱点になっているようだ。

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キスケが上がってきて全員がそろったところで、

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厳かに「雪庇切り崩しの儀」を執り行い、頂上に転げ上がった。

そこはモッカ平の上端である。みんな歓声を上げながら一人づつ上がる。
13:00であった。
そこでしばらく興奮をさましてから、50m歩いて山頂に立つ。

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あとはいつもの美しい風景に酔いながら降りていくだけです。

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ちょっとちょっと、そっちじゃないよ!

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雨のせいでこんなシマシマが出来たのかな?
偵察の時はこんなのなかった。


下りは山頂から400mほど東の平らなピークから南に降りる尾根(仮称:縫ヶ原山東峰南尾根)。

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雪が腐りまくっていて結構苦しかった。15:20 林道の朝付けたトレースに出た。


こんな手軽に登れる1300m程度の山で、これだけ簡単で、しかもこれだけいろんな面白いものが次々出てきて、構成もドラマチックなルートはなかなかないと思う。

そして全く情報がなく、登れるかどうかも分からないような場所にルートを設定して「とりあえず行ってみよう」とドキドキしながら登って行った結果が、首尾よく登れて、しかもその内容が素晴らしいなんていうことは、今の時代にそうしょっちゅう起こることではない。
そんな体験をみんなと共有できたことは大きな喜びであった。

縫ヶ原山南面にはまだまだ続きがあります。
そしてこのⅡ稜も、今回は気温の高い雨の直後の日でしたが、雪が降った後で木が真っ白になっているときに来たらまた全然違う顔を見せてくれるだろう。
そんな日にまた来たいと思わせてくれるルートでした。


お願い:縫ヶ原山の南面は、どこを歩いてもテープやひもなどの人工物が全く見当たらない状態です。今後登られる方も、そのような残置物の設置はひかえていただき、原始の姿をとどめていただけるよう切にお願いいたします。


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