鈴鹿の沢のなかで、大滝登攀や北部の水の流れてないキワモノ的な沢を除くと、ホタガ谷が一番難しいグレードがついています。泳ぎはゼロの登攀系。今回はそんなホタガ谷とまっこう勝負してきました。
実はこの春に沢靴をフェルトの地下足袋みたいなやつからキャラバンに変えて以来、靴が硬すぎるのか難しめの岩がどうもうまく登れなくて、「俺、岩登り下手になったかなあ・・」と少々自信を無くしていました。沢で岩登りが下手というのは致命的なので(特にリードする人は)、今期2足目ですがモンベルのゴム底の靴を買って今回が初投入。
ゴムは初めてなのでどうかとも思いましたが・・・。うーん、やっぱ全然違いますわ。クライミングシューズっぽいです。登れるから楽しさも倍増です。
モンベルさまさまですね。
ちなみにグローブはクライムライフです。
さてホタガ谷。宇賀渓の林道終点のあずま屋で準備をして、その先の橋の所から入渓が8:30ぐらい。ホタガ谷の出合は目の前に見えてる滝です。
ホタガ谷に入って5分も進むと第一核心の15m滝。
左端の方の濡れた凹状部を登ります。
予想してたよりだいぶ悪かったです。
朝一でまだ体の動きが悪いといういのもあるかもしれないけど、精神的にはここがダントツの核心と思いました。
途中1本だけ残置ハーケンがありましたが、ボロボロのスリングがガチガチに締まって穴を占領していて使えない状態。カムを一応セットしたが、まあ気休めぐらいの感じです。途中でハーケン打とうとしたけど、なかなか良いリスがなく全然入って行かない。落ちられません。
コツとしてはエレガントに登ろうとしないことだな。泥に体をこすりつけるように登れば道は開けます。
しもさんはサクサク登ってきたので、ムーブは難しくないのかも。
一つ終わってやれやれと思いながら歩き始めたら、何やら前方でしもさんがパニクって大声で叫んでいる。何が起こったかと見に行ったら、しもさんよりも10倍ぐらいパニクったイノシシが、狭い谷の中で行き場を失って右往左往と走り回ってる!
こんな面白い光景は人生の中でそう見れるものではないので、私はカメラを出していたら、何とイノシシはこちらに向かって突進してくるではないか!
不安定な場所なので逃げようにも逃げられない! どんどん近づいてくる!
この時、わずか1秒ぐらいの短い時間ですが、私は人生を半分ぐらいあきらめてました。
しかしイノシシは私の足の20㎝ぐらい横を走り抜けて、下流の方にいってしまいました。
足元を駆け抜けていった丸い物体 60Lザックぐらいの大きさか?
呆然と見送りながら、ふと横のしもさんを見たらハンマー握りしめてた。イノシシに遭遇した時、とっさに私はカメラを取り出し、しもさんはハンマーを取り出すということだ。育ちの違いか?
気を取り直して進む。
すぐに第二核心。2段の滝で2段ともそれなりに難しい。
下段は左の壁を登る
良いホールドが続いているが、実質ノープロなので慎重に。ここはまあクライマーなら大丈夫だろう。テラスに上がり残置ハーケンにクリップしてからさらに先のくぼみにおりて後続を確保する。
上段
上段はネットでは相当調べたが、滝を直登してる記録は一つも見当たらず、ほとんどのパーティーは左の凹状部(写真では見えてない)から巻き登ってるようだ。
私たちもそうする予定だったのだが、実際に滝を前にすると、見れば見るほど登れるように思えてきた。上の方は傾斜も緩み易しそうに見える。とりあえずちょっとやってみることにした。
右の黒い壁を登る。クラックが走ってるのでカムが効くだろうと思ったのは完全にフェイクだった。下の方でエイリアンを一個決めたが、実質的にはノープロだ。
最初は右の方のコーナーに足を置いていたが、もろくて崩れるので、思い切って左に出て、ワンムーブちょっと怖かったけど登れました。
今日は軽めのシャワーでしたが、水が多かったら厳しいかも。
上に上がると傾斜も緩む。下には下段の落ち口が見えていて、かなりワイルドな場所だ。
この辺は水圧が凄いのと岩がつるつるなので見た目より大変。キャラバンの靴のしもさんは相当苦労していた。
なお、終了点にハーケンを残置してしまいました。ちょっと高いハーケンなので使ってやってくださいね。
これが終わったのが10:20ぐらい。もう2時間近くも経ってしまった。
ほとんど(全く?)登られてない滝が登れて、もうここで帰るかと思うぐらい良い気分でしたが、まだ第三核心の「分かれ滝」が待ってるのでぼつぼつ進みます。
ここから分かれ滝までは、平流か簡単な滝だけで、ロープは使いません。中だるみです。
平流部分は倒木が多くて、楽しくないし苦痛です。
この人も中だるみの最中。 というか、この人が忙しそうにしてるのは見たことない。
やがて岩の色が黒くかわると分かれ滝も近い
分かれ滝が見えてきた
下部は寝てる。上部も寝てる。真ん中の数mがほぼ垂直だ。
ここもネット上に水線沿いを登ってる記録は見つけられず、みんな右の壁を登るらしい。
でもその壁も相当に悪そうだ。どうしようかと思ってたら、しもさんが水線沿いが行けるのではないかと言い出した。見てみると確かにホールドが続いてて何とか行けそうだが、その辺だけが特別に岩がぬめっていて足を置いてもつるつるだ。
ちょっと考えて水線沿いを行ってみることにした。
滝のすぐ左をちょっと登ると、見えてなかったクラックが見つかってエイリアンを2発決められた。ここから流水に頭を突っ込んで右にうつり、ガバへ。でもその上には期待してたようなホールドはなく、こうなったらガバでマントルじゃ、おりゃー! とやってたら、下の足が突然抜けて落ちてしまった。
エイリアンが効いてたから何ともなかったが、すべる気配もなく突然すべったので、不意落ちみたいになってしまって少しやばかった。岩質のせいか?ゴムの特性か? 勉強になった。
一回下まで降ろしてもらって、再度トライ。今度はマントルの脚をヒールから入れたらうまく決められました。あとは流心に立ちこんでいってスラブにあがって途中の木でビレイ。
フォローも岩に顔をこすりつけて渾身のムーブです。
これが終わったのが12:30。滝の上はとても良い場所だったので、ここで終了することにしました。
難しいと言われてる沢で、情報に惑わされずに自分の目でラインを選んで登ることが出来て、非常に充実した良い日でした。自信も付いた。
でもここからの下りが、いろんな意味で地獄のようでした。
しもさんが足に着いてたヒルを捕まえて、一か所に集めて集合写真。
参考までに:全体としてエイリアンサイズのカムが有効です。特に緑と黄色は多用するので、2個づつあっても良いぐらいと思います。