錫杖岳 前衛フェース 左方カンテ



2006年12月16−17日

メンバー:石原(名古屋渓稜会)、神林

ルート:

 金曜夜10時、恵那市市役所に集合し下道で新穂高温泉へ。途中道を間違えて2時頃駐車場着。他に車は無し。明日は貸切と期待するが、駐車場に雪が全く無いのは心配だった。5時起床するが2人とも眠たいため、ゆっくり支度。645分出発。川を渡った先から雪が出始める。左方カンテ取り付きで、脛かそれ以上の積雪。天気が良く1ピッチ目の右側壁からは水滴が落ちている。1050分登攀開始。

1P神林リード。簡単なピッチだがビレイ点は上からの雪解け?水で大雨状態。ずぶ濡れとなる。無理をしてももう少し先でビレイすれば良かった。下方をみると3人組パーティが左方カンテ取り付きにいた。

2P石原リード。すこし岩登りらしくなる。1ポイント人工を入れて終了点。

3P神林リード。出だしがすこしいやらしい。ピナクルにスリングをかけてアブミで通過。A1からフリーになるところはホールドが大きく岩が硬いため思い切って動ける。楽しかったけれど動きが雑になって足ブラになった。チムニー下までザイルを伸ばす。

4P石原リード。リードも苦しそうだったが、荷物をかついだセカンドの私のほうも苦しいピッチだった。チムニー内をビレイループにザックをぶら下げてずり上がると息が上がる。チムニーを抜けた先もザックを担ぎなおす余裕が無く途中までザックを引きずって登る。思えばベルジュエールを登ったときも、チムニーのピッチは私がセカンドだった。あのときも苦しかった。

5P神林リード。雪とぐずぐずの氷をはらいながらA1。傾斜の緩んだ箇所のフリーは明確なホールドが無いためマントルの要領で立ちこむ。その後の右トラバースも雪壁に移るまではバランシーだった。手持ちのギアが少ないのともう少しで暗くなるのに私のヘッデンがセカンドのザック内であることから、ハング下でピッチを切る。セコンドの石原さんがA1の箇所ではまり、途中でユマールに切り替える。石原さんがビレイ点に着いたときは真暗。以後はヘッデンで行動。

6P神林リード。出だしがA1。その後はフリー。凹角内の脆いホールドを出来るだけ使わないように超えると大テラス。ここでツェルトを被って大休止してから登攀再開。

7P神林リード。チムニーに入り込んだあとのフリーが難しい。背中側の壁を使いながら高度をあげる。パンプしそうになる腕をなだめながらじりじりと高度を稼ぐ。傾斜の緩んだ箇所に来たときには既に1時間半近くが経過していた。あと終了点まではスラブ帯を10m弱登れば良いだけのはずだが、アブミを下に置いてきてしまっていたので残置ハーケン2本とカム2つ(赤エイリアンとキャメ0.5)でビレイ点をつくりピッチを切る。

8P神林リード。アブミ1段目に立ち込んでバイルの届く範囲の雪を払うが明確なホールドも残置も無い。左に草付きがあるが、バイルがしっかり決まらない上に5ミリも刺さらない。それでは右だと、凍った緑エイリアンをこすって暖めて、がたがたのクラックに決める。バチ効きではないがこれ以上は望めない。アブミをかけてそっと1段目に立ち込んで更に雪とぐずぐずの氷を払う。ムーブを起こせそうなハンドホールドは1つだけあったが、それ以外には明確なスタンスも残置も無い。フリーで登れというのか。フィフィにぶら下がりながらスラブをじっくり眺める。そして敗退を決める。この壁の状態と私の実力からはこれ以上登れないと判断。登り続けてきた疲労もあったと思う。思わず罵声が出る。すぐ目の前の終了点に辿りつけない自分が情けなくてしょうが無かった。大テラスまで懸垂下降。1P目で濡らしたザイルは氷の棒になっていて扱いづらかった。2人が大テラスに着いたのが夜中の1時半。ここでビバークを決める。

今回の山行で私はソフトシェルを穿いていてこれまでは不自由を感じていなかったが、1P目でずぶ濡れになったズボンはさすがに浸水して下半身は1日濡れたままだった。更に水は足を伝って靴の中はプール状態になっていた。だからビバークは夜明けまでの4時間程度だったにもかかわらず非常に寒くて辛かった。正味1時間も寝れなかった。7時に同ルートを下降開始。粉雪の舞う冬壁らしい天候。9時に取り付き。11時半頃に駐車場着。温泉ではあまりの気持ちよさに思わず声がでた。暖かいのはすばらしい。ご飯を食べた後は2人とも睡魔に襲われる。運転を交代しながら帰名。

P.S.後続パーティは男2女1の3人組。一人は立川山岳会と書かれたヘルメットを被っていた。1日目に3ピッチ分をFIXして、2日目に完登を狙う作戦。オールリードしていた男性は早くて上手かった。「よれよれなるままに」というブログにこのパーティの記録が載っていた。

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