唐沢岳幕岩 広島ルート

2006年10月21−22日

メンバー:碓井、神林

 七倉に向かう道路に雨が降った跡があり壁の状態が心配。駐車場に我々の他にテント無し。4時起床5時発。天気は晴れ。毎度の単調なアスファルト道を約45分。予定通りダムに着くころには明るくなり即入渓。去年より若干踏み跡がしっかりしている気がした。7時40分頃大町の宿。大休止と登攀準備を整えて取り付きである大ハング下を目指す。適当なところからロープを出す。ハング直下はフィックスがべた張り。もっと楽なアプローチがあったと思う。9時半過ぎ登攀開始。

1P神林リード。ルートが色々あるのでトポを頼りに慎重に取り付く。ハングの一番奥まったところから少し左手の残置のスリングがたくさん垂れ下がったのが広島ルート。ザックを背負ったままリード。被った壁でのアブミは久しぶり。汗だくになるだけでペースが上がらない。何とかほとんど180度の天井にたどり着くが、ここで残置のスリングが切れて墜落。あっというまだった。一度ロワーダウンで降ろしてもらって、トップロープ状態で空荷で再び取り付く。体がかるくなったおかげで今度は楽にリード。ハングを超えて垂壁を登りA0で右手の終了点に這い上がる。ザイル1本を碓井さんのフォローに使用。もう1本を荷揚げに使用。このシステムは、荷物の面倒を見なければいけない碓井さんのほうがリードの私より大変でした。

2P碓井リード。A1のあと、悪い草付き。草付きはろくな支点がとれない。唐幕らしいピッチと感じました。

3P神林リード。眼上の急なルンゼ状を目指して50mいっぱいザイルを伸ばす。明確な終了点無し。手近のリングボルトからスリングを伸ばして終了点を作成。

4P碓井リード。A1の後の数手のフリーが悪いらしく碓井さんかなり苦戦。そこを超えるとザイルが順調に伸びだすが、急にザイルが緩みだし碓井さんがクライムダウンしているのを感じる。結局核心部を超えたすぐ上で終了。

5P神林リード。残置全く無しのスラブ。左手は傾斜は無いが岩苔がびっしり。正面は草付き混じりの凹角。右手は草付きのあとにスラブ。迷って正面を選択。途中までは楽だが途中から厳しくなる。目の上の丈夫そうな潅木をつかみたいのに届かない。頑張っているうちに左足を乗せていた草付きが崩れて滑落。途中のキャメ1番で止まってくれたが6〜7m落ちた。左膝から軽い出血。再びトライするもテンション。これは駄目だと思いロワーダウンさせてもらって右手スラブを登る。凹角より開放感があり支点無しでは緊張する。30mほどノーピンで登ってフレークに緑エイリアンを効かせる。そこから10mほど上部でリングボルト1個。その横5m程でリングボルト2つ。ここでピッチを切る。

6P碓井リード。再びスラブ。ここも残置ほとんど無し。ハーケン、ナッツ、カムを利用して支点をとり潅木帯へ。立ち木でビレイ。ここが大テラスだろう。この時点で17時半ごろ。

今日はここでビバークとする。ツェルトを張ってのんびりする。火器を持ってきていないので行動食をかじり水を飲むだけ。薄暮の上部ハング帯がとても迫力がありかっこいい。早く寝ても寒くて目が覚めるからと暫く碓井さんと話をする。防寒具を着込みホッカイロを靴下に入れ夜食のチョコレートバーをポケットに忍ばせて19時頃就寝。窮屈だが一応二人とも横になれる。もちろんセルフビレイは付けたまま寝る。5時40分頃起床。夜は多少寒かったが、それよりも腰が強張ってしまったほうが気になった。快晴。今日は私の28歳の誕生日。壁中で迎えるのは初めて。朝焼けに映える山脈が美しい。

7P碓井リード。スラブ直上でハング帯直下まで。相変わらず残置はとぼしい。朝一は体が動かない。

8P神林リード。もろい壁を直上の後、潅木帯を大きく右トラバース。京都ルートを通り過ぎたテラスにリングボルト2つ。このビレイポイントが広島ルートか京都ルートのものか判断がつかなかったので更にトラバース。すると次ピッチの広島ルートが見えた。さっきの終了点で良かったようだ。戻るのも面倒だったので立ち木でビレイ。

9P碓井リード。A2の前傾壁。ザイルを適時に張ってリードを手伝う。前傾壁を抜けたところでハンギングビレイ。

10P神林リード。A1で直上。一部濡れたスラブのフリーが混じる。その後、A0で大きく右にトラバースしてから潅木帯に這い上がり立ち木でビレイ。

11P碓井リード。短い垂壁をA1で越えたら、あとは易しくなり上部潅木帯に到着。

念のためもう1P神林リードで安全地帯まで。この時点で11時過ぎ。大休止。ザイルをたたみ靴を履き替えて薄い踏み跡をたどる。今回、私も初めてとなる西壁ルンゼ上部経由での右稜の頭到着となった。懸垂は順調だったが、その後歩いて大町の宿へ向かうところで道に迷う。かなりはまった後でようやく大町の宿着。時間が押しているので休まず下山。16時少し前にダムに到着。ひっきりなしにタクシーが行き交っていた。再び単調なアスファルト道を歩き車に戻る。

自分の力不足を感じるとともに本ちゃんの怖さを感じる山行でした。でもとても充実していました。もっと実力を上げたいと思いました。また自分は唐幕に登りにくるでしょう。そのときは今よりも強い自分でいたいと思います。

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