宝剣岳 中央稜

2006年12月23−24日

メンバー:石原(名古屋渓稜会)、神林

私は宝剣中央稜を日帰りでこなし翌日の御岳での雪訓に朝から参加する計画のためパートナーには現地集合をお願いした。土曜日に登攀するこの計画を2日前に電話して二つ返事でパートナーになってもらった石原さんには感謝。夜中に駐車場にテン泊。始発のバスは8時過ぎなのでゆっくり寝る。

快晴。始発のバスとロープウェイを乗り継いで千畳敷到着。急いで出発。最初に歩き始めた2人組のクライマーを追い越して登る。彼らが中央稜狙いかは不明だがとりあえず取り付きには1番に到着しよう。石原さんは2週間前に宝剣中央稜へのアプローチで雪崩に流されているが、今日の雪はしまっているし、深さも大したことは無い。中央稜の取り付きは判然としないが、トポと見比べて判断する。10時40分頃登攀開始。

1P神林リード。登りはじめようとしたら、両足ともアイゼンが外れかけているのを指摘される。外れかけの状態で登りつづけていたらと思うと、今でも怖い。アイゼンを直しているときに先程追い越した2人組が私達を通り過ぎて中央バンドの奥へ進んで行く。彼らも中央稜狙いだが1P目は別ルートから登るようだ。アイゼンを直していざ登攀再開。ガバを利用して体を持ち上げ直上。ここから右側の雪壁に移りたいが少し直上しすぎたようだ。アイゼン前爪を効かせて微妙なトラバースで雪壁へ。しかし雪が少なくバイルを振るとすぐ下の岩に当たる。雪を払いながら前進。狭いチムニー状は薄いベルグラにアイゼンをそっと蹴りこんで上部へ這い上がる。ロープがいっぱいになったので中途半端なところでピッチを切る。岩にアブミをまわしたものと、潅木でビレイ点を作成。あと7〜8mで足場の良さそうなビレイ点が見えるのだが。やはり取り付きが少し違ったらしい。別パーティの先頭が私の左脇の雪壁にひょっこり顔を出し、前述のビレイ点へ。ヘルメットにはTOMA NO MIMIと書いてあったようだ。かすれていたので読み間違いかもしれないが。山岳会の名前だろうか。

2P石原リード。他パーティに先行して登る。前述のビレイポイントまでは容易な雪壁。そこからA1。A1の後の数mの雪壁はバイルが決まらず、岩にもホールドが乏しかった。ここを越え大テラス奥にあるチムニーをカムも利用したA1で強引にずり上がるとビレイ点。この時点で約13時半。16時にロープウェイ駅に戻るには、1時間でオケラクラックをこなし、次のピッチは容易な雪壁らしいので30分で終了すれば15時に山頂。急げば間に合う。そんな計算があった。懸垂下降は気が進まなかった。無雪期は懸垂下降で取付に降り立つはずなのに、しっかりした懸垂下降支点が無く降りるとしたらスリング等を残置しなければならないからだ。登攀続行を即断。

3P神林リード。オケラクラックは見事にカムが決まってくれる。雪と氷をバイルで砕いてクラックを掘り出す。キャメ3.53、2とアブミ2組でカムウォーキング。途中でキャメ2が外れなくてフォローに回収してもらったが、ワイヤが1本切れていた。クラックが狭くなったところにキャメ1番と赤エイリアンを固め取りしてから傾斜の緩んだ雪壁を登る。岩壁を右から回りこみフェースとピナクルの間のテラス?でピッチを切る。ビレイ点は残置ハーケン2と潅木。面白いピッチだったが時間がかかった。日帰りは半ば諦めた。

4P石原リード。易しいフェースのあとブッシュと岩のやらしい数mをこなすと傾斜が落ちてぐっと易しくなる。山頂でビレイ。このピッチは50mでぎりぎり足りず私がセルフビレイを外して数m登って距離を稼いだ。互いのコールが全く聞こえずロープの動きだけで状況を推測しなければならず、これはこれで危ない状況だったと思う。16時宝剣岳山頂。登攀時間約5時間20分。

山頂はとても風が強い。むき出しの耳があっという間に凍傷になりそうだ。長居は無用。ビレイしてもらって私が先に降りる。次に私がビレイして石原さんと合流したら後はコンテで宝剣山荘まで。相変わらず稜線は風が強かった。宝剣山荘は冬季に避難小屋になっていたはずなのでここで泊まるか、それとも下の駅に降りるか。どっちにしても火器は無くツェルト1枚のビバークなので相当寒いだろうな、いっそ下のホテルに泊まってやろうかなどと考えていると宝剣山荘が営業していた。一定人数以上で予約したときは営業するそうだ。暖かいストーブの誘惑に負けて素泊まりをお願いする。本当にラッキーだった。他の宿泊客は全て写真を撮りに来た人達だった。濡れたものを乾かしながら時間をもてあましたので、石原さんとクライミングしりとりをする。1時間少しは続いたかな?その後は岳人のバックナンバーを読む。黒部特集やヨセミテの記事があったりして面白かった。20時15分消灯。布団で熟睡。

翌日はさっさとロープウェイ駅に降りる。今日も快晴。山並が美しい。始発のロープウェイで下山。

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