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プロローグ ある冬の日、会社のコーヒーメーカーの操作方法を間違えて、ひどく薄いコーヒーを大量に作ってしまった。責任を取ってがぶがぶと飲んでいるうちに、ふとアメリカのガソリンスタンドで¢90払って飲む、あの妙に薄いコーヒーの事を思い出してしまい、無性に懐かしい気持ちになっていた。「ああ、アメリカニイキタイ…」 こうなると、もう誰にも止められない。次の週にはゴールデンウィークのLA行きのチケットを手配してしまった。かくして、薄いコーヒーへの妄想と期待は一人歩きを始め、バブルのように膨らんでいく。そしてついに連休、やってきましたカリフォルニア。期待に胸をふくらませ、発泡スチロールのカップから一口含んだそれは……。それはコーヒーというよりも「出すぎた麦茶」のようなひどい代物であった。 This is アメリカ! |
Joshua Tree について Joshua Tree はロスから200kmそこそこ。近いといっても、着いたその日のドライブはつらい。それでも「麦茶コーヒー」でうがい等しながら3時間もがんばれば、道路脇にたたずむ最初のジョシュアの木とご対面できる。 さて、ジョシュアでのクライミングだが、 1.ボルトが遠い。 2.グレード辛い 3.寒くて暑い 4.終了点とか無いルートも多く、歩いて下降とかメンドくさい。 5.それでも、クライミングはすごく面白い。 (^o^) |
昨年のユタでは、イレブン台のクラックをオンサイトしまくった二人だったが、今回の最高グレードは、井土10b、アネゴ9 と、寂しいかぎりで、井土は10cのクラックでムーブが出来ずに敗退とかしてしったし、10b以上のフェイスは怖くて触る気にもならなかった。(これは、とりあえずグレードが辛いからだと解釈しているが、単にヘボくなってるだけ、との説もある。) でも、9とか10aとか登ってても、それだけで充分満足ってぐらい、1本1本がいいんですよ。なんと言っても、ジョシュア全体で、現在ルート数は5000本。日本の岩場感覚だったら、その10倍ぐらい作れそうってぐらい、美味しいとこだけ登って5000本だ。そのなかで人気トップ10クラスのルートばっかり登っていたわけだから、さもありなむでしょう。 |
エリアの紹介 ※ルート名の後の( )内は、井土が勝手につけた邦訳。本来のニュアンスと異なる場合があります。 |
シープパスという岩場があるわけではなく、ライアンキャンプ場からシープパスまでの間の道路脇に点在する岩場をひっくるめてこう呼ぶ。移動には車が必要。 ジョシュアで迎える最初の朝におすすめは、ライアンキャンプ場から徒歩3分のHead Stone。SW corner(南西のかど) 5.6 と Cryptic(ヒ・ミ・ツ) 5.8 は、どちらも恐くないボルトルートで快適。 車でしばらく東に走ると、Saddle Rock が見えてくる。ジョシュアで最も大きい岩の固まりの一つだ。ここの一押し Walk on the Wild Side(ワイルドで行こう) 5.8 は、45m + 55mのスラブの海。岩が大きくて、ボルトが遠くて、本当に楽しい。弱点を縫ってくねくね行くので、長スリング必携。下降はダブルロープ。 Hall of Horrors も 5.10 代のナイスなルートが何本かある。 Exorcist(悪霊退散請け負い人) 5.10a は垂直のフィンガーから突如として巨ガバフェースに移行。すごい面白かったが、結構ぎりぎりだった。これで10aか?自信なくすわ。 SW Corner 5.6 |
クライマーはヒドゥンバレーキャンプ場周辺のことを「ヒドゥンバレー」と呼んでいるが、本来のヒドゥンバレーは、ちょっと南に入ったこっちの「リアルヒドゥンバレー」の事である。(分かりにくい説明だ。)キャンプ場から歩いて10分ほど。細い回廊をくぐっていくと、四方を岩に囲まれた平坦な草地に出る。外からみると1個の岩山にしか見えず、中にこんな平地があるなんて思えない。これが名前の由来であり、かつて西部開拓時代に有名な悪党マクハニー兄弟が盗んできた牛をここに隠していたという歴史の由縁である。 このエリアは、5.10前後のメガクラシックが目白押しだ。Loose Lady (ゆるいお嬢さん)5.9+ は、ジョシュアのランナウトの洗礼を受けるための最初の一本として好適だろう。要60mロープ。アップが必要なら、近くのLucky Lady(ついてるお嬢さん)5.8 が良い。Illusion Dweller(幻影に住む者) 5.10b は、数少ない5つ星のルートの1本である。35mの右上クラックをがんばって登っていくと、最後に核心のハング越えという構成が素晴らしい。60mロープで懸垂すると1.5m足りないので飛び降りよう。 Clean & Jark(クリーンとジャーク) 5.10c は、何と出だしのムーブが出来ずに敗退してしまった。これはショックだったよ。登りたかったRun for Your Life(君の命のために走ろう)5.10b は、噂を聞いて恐くなったので止めといた。ルート名の Run は、ランナウトの事を指すのだろうか?ちなみに隣の Run from Your Wife(奥さんから逃げ出そう)の方が難しくて10c。人生とはそういう物なのだろう。 もうちょっと簡単なところでは、Sail Away(果て無き航海)5.7 は初心者でもこなせる楽しいクラック。Leaping Leana (跳ねてる理奈ちゃん)は、5.6 と思ってなめてた井土もちょっとびびりました。 |
一大スラブエリア。まずは有名な Double Dip(二回どぼっとソースに浸ける) 5.6 と行きたいところだが、混んでて登らず。Stichter Quits (仕立て屋の引退)5.7+ は簡単で面白いが、上の方はすごいランナウトなので、初心者は要注意。ダブルで懸垂するか、ずっと左の方から歩いて下降する。 Heart & Sole (ハートと靴底)5.10a は、恐かったけど、本当に味わい深い名ルートだ。ジョシュアで10aを余裕もって登るのは、かなり実力がいると感じる。Touch & Go(タッチしてゴー!)5.9 のコーナークラックも結構悪い。これが5.9なら、小川山レイバックは5.7も貰えないかも。 |
車で走りまわっているだけでも、ジョシュアの岩の量がどんなにすごいか分かったような気になるだろう。でも、本当のすごさはワンダーランドに入ってみなければ分からない。ワンダーランドこそジョシュアの心臓であり、あの延々と続く岩の回廊を見ずしてジョシュアを語ることは出来ない。 最も有名でアプローチも近い Astro Dome でも取付きまで1時間は見た方がいい。ここの2枚看板の一つ、 Solid Gold(無垢の黄金) 5.10a(2p) は誰が選んでもジョシュアのベスト5に入るというリアル名ルート。本当に素晴らしい。なんでこんなラインが存在しうるのか。 この1本のためにアメリカに行く価値があると思う。 Figures on landscape(風景上の人影) 5.10b(2p) もそれに輪をかけたような名ルートらしいが、そこまで手が回らなかった。次回は登りたい。 さらにちょっと北に進むと、Lenticular Dome がある。ここには Mental Physics(精神的物理学) 5.7 とDazed & Confused(呆然&混乱) 5.9 の2本の2ピッチルートがある。比較的フレンドリーで、初心者でも結構こなせるだろう。てっぺんから見るワンダーランドの素晴らしい景色をいつまでも眺めていた。 |
最後の最後に、Rubicon (背水の陣) 5.10d を登りに行った。広めのハンドを5m登り、その後15m真左にトラバース。そこからが核心で、右上するフィンガークラックが約20mにわたって続いている。ロープドラッグの練習用みたいなルートだ。結構真剣にがんばったのだが、お疲れか実力不足か、ドテンションとなってしまった。いいルートです。次回は絶対登ってやる。近くの Bird of Fire (火の鳥) 5.10a も名クラックです。この界隈はなぜかジョシュアの木があまり生えてない。でも景色が良くて感動します。 |
いくつもの岩場がまとまった大きいエリア。クラックが中心で、好ルートの密度という点では、一番かもしれない。Hemingway Buttress では、まず初日に Poodles are People too(プードルだって人間だ) 5.10b でジョシュアの厳しさを思い知らされた。ナッツ中心の細いクラックで、40m近くにわたってぜんぜん気が抜けない。 Overseer (監督さん) 5.9 でもまじで落ちるかと思った。どれも厳しいよなあ。この辺はみんなルートが長いので、終了点からずーと右の方に歩いていって、懸垂するとよい。 行けなかったLost Horse Wall は Dappled Mare(まだらの牝馬) 5.8 や Bird on a Wire (電線の鳥)5.10a といった2ピッチのルートが看板。その裏にあるRock Garden Valley は、ちょっとアプローチがきついが、行く価値はある。Double Dogleg(ダブル犬の足)は5.7のクラックがかくも面白くなりうるものか、と言う事を教えてくれた。Smithereens(こっぱみじん) 5.9 も然り。ここのルートはみな面白かった。他にもたくさん岩場があって、よく把握できません。 |
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JoshuaTree生活ガイド キャンプ場から20分ほどのドライブで、ジョシュアトゥリーの街に出られる。 およそジョシュアで必要になりそうなギアは、この街のNomado Venture で手に入る。キャンプ場に水は皆無なので、スーパーなどで買う必要があるが、手洗い用の水ぐらいなら、Nomado Venture の向かいの Coyote Corner という土産物屋で汲ませてもらえる。 ただし、何も買い物をしない場合はガロンあたり25¢ぐらいの寄付をしよう。Coyote Corner にはコインシャワーもあり、けっこう清潔だ。$3で充分。 そこからコインランドリーは、西に500mぐらい。ただし、洗剤の自販機は壊れているので、日本から小袋を持っていくべし。 本格的に食料を買い込むなら、隣町のYucca Valley に行くと良い。さらに10分ぐらいのドライブだ。 Yucca Valleyには、「知的な会話」以外の全ての物が揃っていると、ものの本に書いてあった。Vons は普通(やや高め)のスーパーマーケットで、 Food 4-Less は商品山積み系のディスカウントスーパー。 Wal Mart は、食料品以外のほとんどのものが揃うホームセンター。たいていパワーバーはWal Martが安い。 手軽なレストランなら、Sizzler というアメリカ中にチェーン展開するファミレスがお勧め。ここの目玉はサラダバー。サラダバーだけで注文でき、$8ぐらい。内容は、サラダだけでなく、各種スープ、パスタ、パン、チャーハン、揚げ物各種、タコス、フルーツ、各種ケーキ、アイスクリーム、コーヒーなどなど、一度食べてみたかったアメリカ料理と、出来ることなら食べずにすませたかったアメリカ料理のすべてがここで味わえる。腹一杯は約束されている。ジョシュアトゥリーの街には、タイ料理屋もあって、日曜の夜は食べ放題らしい。 インターネットアクセスは、タイ料理屋の隣の「ジェレミーのビートニクカフェ」で可能。ここではでちゃんとしたコーヒーが飲める。(アメリカでは、こういうちゃんとしたコーヒーの事を、麦茶コーヒーと区別して「グルメコーヒー」と呼ぶが、「ぐるめこーひー」という発音では通じない。「ゴーメコッフィー」と発音する事。) レスト日は、Desert Hotspring(砂漠温泉)で人工ミネラル温泉に浸かった後、CabazonにあるCa州でも最大と言われるアウトレットモールに行ってブランド品をカードの限度額まで買いまくり、仕上げに動けなくなるまでタイ料理を食べて過ごすと良い。 |