北アルプス 赤沢岳西尾根 U峰南稜第一グラート

メンバー/千田・朝岡・寺田(記録/千田)

5/3 扇沢 8:45−屏風尾根と主稜線の接合部 14:10 CS
5/4 ガスのため停滞
5/5 CS 4:40−大スバリ沢 7:20/40−(くの字ルンゼ)−取付き 9:10/20−U峰南稜の登攀終了 15:00−窓(TU峰のコル)17:00 CS
5/6 CS 5:00−右岩稜と西尾根のJP(北西壁を見学)6:30/7:00−赤沢岳 9:00/20−初日のテン場 10:00/20−扇沢 12:00 下山

昨年、丸山東壁を登攀した帰り道。秋晴れの済んだ青空に映える赤沢岳西尾根の姿が目に飛び込んできた。その印象的なラインは私の心を魅了するに十分だった。GWの計画を立てるに当たって、是非ともこの山域に入りたいと考え、針ノ木、スバリ岳、黒部横断など色々と考えたが、最終的に<U峰南稜〜北西壁の継続>というプランを決めた。GWの後半でも、自分たちのトレースをつけられる静かなエリアに期待を膨らませて扇沢へと足を運んだ。

屏風尾根を越えて主稜線に出ると、そこには素晴らしい景色が広がっている。スバリ岳の黒々とした2本の岩稜。我々の目指す赤沢岳。U峰南稜はいかにも長大で、登攀意欲をくすぐる。下を見れば、氷結した黒部湖。そして奥には、残照で薄紅色に染まる剣岳が重量感一杯にそびえている。美しい世界、幸せな一時を楽しむことができる。

主稜線からの下降は、一苦労させられた。最低コルから降っていったが、北に入りすぎてしまい、懸垂下降を2回した。下の雪渓まで届いているのか分からずに下りていくのは緊張感一杯だ。あとで西尾根から見てみると、屏風尾根と主稜線の接合部から下降した方が楽そうだった。

実際のU峰南稜第一グラートは、残置物も殆どなく(ピトンを2本見たのみ)、快適な岩稜登りに終始する。ルートスケールも、下部はルンゼ歩きのため、見た目ほど大きくはない。プロテクションはブッシュ中心。岩も硬くカム類は有効だ。所々泊まれるポイントもあるので、取付いてしまえば意外と簡単だろう。ロープは、西尾根に抜けるまで7ピッチ、抜けてから雪面のトラバースなどに数ピッチを使用した。登攀中、右手には第二グラート、主稜などのルートが平行して走っている。なかなかに魅力的だった。

窓からはガレた尾根をたどり、右岩稜とのJPに立つと赤沢岳の北西壁が聳え立っている。初めて出会ったその壁は、想像以上に立派で迫力があった。取付くかどうか迷いに迷ったが、結局は取付くことをやめた。壁の圧力に負けてしまった。

尾根をそのままたどり、ようやく赤沢岳の静かな頂上に立つ。真っ白な鹿島槍、そこから伸びる牛首尾根、黒部別山の各ルート、丸山東壁、剣岳などを眺めて時間を過ごす。今年の冬、またあの山々に来ようと思い、しばしの分かれの挨拶をして下山の途についた。

扇沢まで下りると、雪は更に少なくなっていた。春山のシーズンももう終わりだ。また、乾いた岩の季節が始まる。

3月からずっと、白馬鑓、不帰、白馬主稜、爺ヶ岳、スバリ岳・・と計画倒れあるいは敗退と、フラストレーションの溜まる日々だったが、最後は好天に恵まれ、半分とはいえ計画を成功させられた。自分でこの山域を掘り出したこととあわせ、満足感は大きい。一方、壁の圧力に負けてしまい、日程的にも体力的にも諦める理由はどこにもなかったにもかかわらず諦めた自分が情けなかった。この2ヶ月間、多くのことを経験し、考え、学ぶことができた。これを今後に活かしていきたい、もっと強い自分であるために。

以上(記 千田)

★★ 以下、メンバーの感想など ★★

(朝岡)
3月からずっと敗退続きで、ダレていたが、GWは天気もよく逃げる理由は何もなかった。主稜線から見る赤沢南稜はとても長く、取付く前日は緊張感で張りつめていた。第一グラート自体は取付いてみると、快適な岩稜登りで、ビバークも無くサクサクと終わった。そしていつもと同じ反省。大スバリ沢下降もクの字リンネもU峰頂上でのトラバースもビビリすぎていた。北西壁にいたっては自信の無さから、計画の段階で壁の圧力に負けていた。それでも、敗退して下山してくると、『天気もちそうだなぁ』『日程も大丈夫だったよなぁ』『見た目程のスケールじゃなかったかもなぁ』などと後悔が次々と浮かんできて、力を出し尽くせなった自分に腹立だしさだけが残る。登りまくって、くたくたに充実できる精神力をつけたい。でも、赤沢周辺はそこここに面白そうな尾根やルートがあって、未知の山域にいく楽しさを満喫させてくれた。是非また訪れたい。

(寺田)
クライミングを始めて2度のGWがすぎたが、今までに雪の有る山に居たことは一度もない。こんな僕が熱い朝岡さんそして、熱すぎる千田さんと一緒に雪の有る山に行くなんて、ウ〜またも胃が痛くなり始めた!しかしそう痛いままにしておいてくれる方々ではない。毎週のようになぜかいつのまにか寒くエライ(名古屋弁)週末を送らせていただき。他の会員からは毎週毎週よくいくなとアキレられているとも、賛辞ともうけとめられるお言葉をいただいたりもした。しかし、今回僕は始めて本気で雪の有る山を良いなと思ってしまった!なぜなら指が痛くない、でも雪の有る山に居ることができるウ〜スバラシイと言うわけである。
こんな感動をくれた朝岡先輩千田先輩本当に有り難うございました。
それから、当分このメンバーで山に行かなくてよいことに感謝。



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