(2000/03)

メンバー:藤田・森崎(報告:藤田)【】は森崎のコメント

 10年前に大学山岳部の利尻東稜パーティーに参加できず、その時から想い焦がれていた利尻南稜にいってきた。
 想い焦がれてはいたものの、年末年始に突撃する技量と勇気はなく、かといってGWにいってしまうのは見合い結婚のような妥協感があり(別に知ってるわけじゃない)、さりとて本当にいきたい3月にはパートナーは居ず… そんなこんなで10年経ってしまったが、ついに「なんちゃって大学院生」森崎をゲット。 というか、森崎の大学院入学が決まった日に「3月の利尻いこうな」「いいっすねぇ」とつぼ八で生大を交わしたのがすでに2年も前のことだった。 【当時森崎の知る利尻は夏のWV報告とわたすげ先輩からの話、あとは山渓付録カレンダーのとても日本とは思えない写真くらいだったかな?、とにかく写真を見たときの印象は強烈...】
 最近は利尻を意識してラッセル山行も重ねてきたし、(以前ほどではないにしろ)体力もまぁまぁ復活してきた。 とはいっても、出発が近づくにつれ気分は「振られたら(=はまったら)どうしよう…」 まさに告白前のどきどきモード。 こんなにときめいたのは(びびったのは)久々。 まぁ、そんなこんなでついに出発の日を迎えた。

3/19 格安チケットにて札幌へ。 まずは荷物をロッカーに押し込み、秀岳荘にてガス缶やら食糧やらを買い込む。 そのまま北に向かい、ボストンベイク(パン屋)にて安でかパンをしこたま購入(名古屋にあったらめちゃめちゃ通ってしまいそうで恐い)。 腹が減って買ったパンを喰ってしまいそうになるのをググッと堪え、さらに北に向かい藤田お気に入りの「茂ラーメン」にて「茂味噌ラーメン」をかっ込む。 「名古屋にあったらやばいわ」とは森崎の談。 その後、ようやく友人の研究室にデポ荷物を預ける。 友人の研究室で時間を潰し、夕方から駅南東の「うおや一丁」へ。 飲み屋で上着を脱ぐと、二人とも黒いパンツに黒いモンベルシャツ。 兄弟に見えるならいいのだが、モー○ーカップル(モー息。?)に見られる恐れあり。 バイトの兄ちゃんも心なしかニヤニヤしているようだし… 2人で魚を喰いまくり、日本酒(ちょっといいやつ)を飲みまくり、計約1万円也(高いか?安いか?)。
森崎は修論の疲れかヘベレケである。
【店を出て改札までの記憶は無い...自慢にならんが最近ほんとに酒好きだがようぇー】
3月のダイヤ改正で特急になってしまった夜行「利尻」にて23時、札幌を後にする。

3/20 稚内に着く直前に車窓から島が見えた! 藤田はこの時点ですでに舞い上がってしまう。 【この時点でまだ気持ち悪くお茶と水ばっか飲んでました...ほんにだめだわ】
フェリーにて鴛泊へ。 交番で登山届けを出すが、目的が「南稜」であることが判明したとたん、延々とお説教を食らう。 去年の今頃秀峰山岳会の2人がヘリでピックアップされており、神経質になっているのだ。 
こちらはそんなこと一言も言ってないのにお巡りさんは「まぁ、夏のルートとかよく知ってるんだろうけど…」と勝手に納得しているし、とても「島自体が初めて」とあえて言う雰囲気ではなかった。 森崎なんか初北海道なのになぁ… ようやく解放され、タクシーに乗り込む。 今年はまだ除雪が入っておらず、海岸線の環状道路からちょいと入った小学校からいよいよ出発と相成る。 ちなみにタクシー代は5810円也、高い。

(鴛泊からの利尻)

3/20 鬼脇小学校(35m) 9:45−11:50 大曲(580m) 12:10−14:50 pk1200m(1305m) 15:10−15:30 pk1300(1330m)−16:40 メガネ岩BS(1315m)
地図で標高を読むとなんとわずか30m! 時計の高度計をあわせ、日焼け止めを塗りたくって良い天気の中をスタート。 森崎は月末から会社に復帰、藤田は帰ってすぐ学位の公開発表があり、2人とも日焼けを恐れつつきている。 振り返れば海の向こうに北の大地が見渡せる。 穏やかな雰囲気の中を小ラッセルで進み、ヤムナイ沢の大曲に到着。
ここから左手の南稜に取り付き、広い斜面をpk1200へ。 風はそんなに強くないが、休んでいるととにかく寒い。 【僕は普段の不摂生からケツ筋なんかぴくぴくでした...なさけない】

このころから、上部にかかっていた雲がきれ、大槍やバットレスが見える。 「うぉ〜なんじゃありゃ〜」 標高差は僅か500mちょっとというのに、そのでかいことでかいこと。 低温による霜ザラメのせいでステップが決まりにくい。 雪面のトラバースなど、結構緊張する。 pk1200をすぎていきなり急峻になる雪稜を及び腰で進み、懸垂20m。

ちょったした薄い岩に、しゃきーんって感じで雪がついていて、笑っちゃうくらい尖っている。 ちょっと広いマオヤニ沢側をラッセルし、pk1300mへ。 ここからはヤムナイ側へ振りながら懸垂25m。 この懸垂は登り返すのがしんどそう。 【このときはほんに懸垂して良いのか自分に問うてました】 メガネ岩のヤムナイ側によいTSあり、本日はここまで。 就寝前には晴れ渡り、鬼脇の明かりが美しい。

TSから上部

3/21 起床(1290m) 3:30−出発(1305m) 5:55−大槍基部(1565m) 7:00−P2基部(1625m) 8:50−9:20 P2(1650m) 9:50−10:30 P1P2コル(1600m)−11:30 P1バットレスコル(1660m)−13:00 バットレス基部−14:50 はい松テラス(1715m)−17:00 TS(1725m)決定

起床直前にションベンに出た森崎に天気を聞くと、「ガスガスで、積雪10cm位っす」。 現実を認めたくない藤田は出発する直前まで森崎のいつもの冗談だと思っていた。 【今おもえば少し強気にこういったものの20cm以上はらくしょーでつもっとった...】 視界は50m位。 風は弱いが雪はどんどん降り積もる。 「うぅ〜む。帰らんでエエのか?」 出発していきなり雪稜が吸収され、斜面をいく。 昨日に引き続き、パウダースノーの下の雪も締まっておらず、いゃ〜なラッセルを強いられる。

雪稜にはい上がってからも不安定なきのこ雪が続き、重い気分で大槍の基部へ(↓)。

正面の浅いルンゼ状にはエビの尻尾がべったり。 右(ヤムナイ側)に回り込むと大きなルンゼが入っている。 懸垂5mからルンゼを藤田が25m登り返す。 雪はばさばさと落ちるが、雪質が軽いので雪崩にもってかれる心配は少ない。 ナイフリッジが終了するところにうまく出る。 ここからマオヤニ側に乗っ越し、森崎が50mめいっぱいトラバース。 続けてP2の基部に向かって藤田が40m。 基部から不安定なきのこ雪の雪稜を森崎が30m。

P2からのP1
P2から仙法志稜を振り返る

いよいよ来てしまいました、問題のP2。 スコップで支点を掘り返し、懸垂15m。 さらに岩を支点に懸垂25m。 登り返しは絶対無理なボロボロの垂壁。 ガスの切れ間にバットレスの偉容が… 「あれを登らな生きて帰れんのか〜」 ロープを引き抜くときはほんまに泣きそう。

P1は大きめの正面ルンゼを直登。最後の1段は凍っていると思ったら、ピッケル振るったとたん雪が落ち、悪い岩の段に… ピンはとれんし、ピッケル・バイルは刺さらんし… ふくらはぎパンパンになってP1の肩へ藤田が40m。 バットレスの基部へ森崎が40m。 コルから基部への登り返しは思わずイボイノシシをたたき込むやらしい草付き&不安定な雪。 【P1から見てたときはここは紐要らんかな?と思えたが着けてって良かった...けどバットレスの1P目は今思えばおいしそうなピッチだった...いいな】
さぁ、ついにバットレス。 見上げているとチリ雪崩がばかばかと落ちてくる。 うむむ…順番の読みでは森崎に当たるはずなのに、しょうがない…。 空身で藤田発進。 垂壁を1ポイントあぶみで2m上がり、右に数mトラバリ、チムニーを上がる。 チムニーを抜けると左手は雪の襞々の垂壁。右にブッシュが埋まっているようで、そちらに悪いトラバース。 そっから上がひじょ〜〜に悪く、でもなんかいけそうで、時間を費やしてしまう。 いよいよ困り、左に戻って雪襞を探るとピン発見。 凹角気味で意外とさくさくいける。ライン読みが悪かった…。 結局2時間もかかってはい松テラスで45m。 森崎は藤田ザックを腰にぶら下げ、しんどいユマーリング。 ライン取りが悪かったところではピンの回収に苦労する。 申し訳なし。 【ユマーリングは死にそうにえらかった。しかし日本的な面白そうなピッチですね。】
時間切れで、はい松テラスの上の雪稜を削り、テントを設置する。 が、テントの床の4分の1は空間にあり、雪面に接していない…。 小便するにも片足はテントに突っ込んでいないとやばい。 ブッシュからセルフを取り、ハーネスを付けたままシュラフに入ったのは22時過ぎだった。 不幸中の幸いか、明日は良い天気だそうだ。 (でなきゃ帰れないってあんなところから…) 【なんか二日とも食いすぎ?で 遅寝でした】

3/22 起床(1705m) 3:30−出発(1710m) 6:30−南峰中央峰コル(1800m) 9:10−中央峰(1825m) 9:50−10:05 利尻山頂(1830m) 10:30−11:00 長官小屋(1295m)−11:15 長官山(1320m)−14:00 鴛泊(-40m)

朝起きたら晴れていた。 よかった〜。

 

朝一で気の毒だが森崎が40m。 いきなり悪い草付き雪壁。 このころには再びガスってくる。 続くルンゼを藤田が40m。 ピンが貧弱で緊張する。 雪壁を森崎が20mあがり、尾根上に出てバットレス終了。
ルンゼをフォローするM崎

なんか生きて帰れそうな気がしてきたぞ。 南峰を右から巻き、中央峰とのコルへ。 雪は相変わらず締まりが悪く、しょっちゅう踏み抜いたりしてしんどい。 中央峰の登りで森崎が20m。

ガスの中にえらい大きいにょきにょきが…。 ついに北峰へたどり着く。礼文や稚内がガスの切れ間に見える。

にょきにょきが・・・なんじゃありゃ? ついに北峰へ・・・

利尻の北側はうって変わってなだらかな雪面となっている。 頂上直下で迷いやすい部分もあるが、下降するにつれ視界もきき、浮き浮き気分で下山する。 最後の樹林帯をさまよい歩き、車道に出たのは利尻温泉のすぐ上であった。 【山頂手前では雪の深さに苦しめられ,下に行ったらさまようさまよう...俺はほんとにワンゲラーだったのか?情けない】
鴛泊で駐在のおっちゃんとだべった後、最終のフェリーで稚内へ。 「稚内では毛ガニがうまいよ」と春日井の宝石商に言われていたが、『本日トンカツ&焼き肉定食半額!』になんらいつもと変わらない飯を食ってしまった。 利尻を登った感動がまずいトンカツで汚されていく…。 再び特急「利尻」に乗り、一路札幌へ。 【こんなこと言われると心残りが...しかし特急利尻はほんにもう飽きた(寝てんだけどね)】

翌23日、札幌で安チケットを購入し、海の幸を東急で仕入れ、海鮮丼をかっこみ、新千歳空港では離陸15分前にチェックインし、受付のお姉ちゃんとセキュリティーチェックを駆け抜ける。「なにこれ!尖ってるよ!だめだめ!」とピッケル・バイル・アイゼンのX線画像を見ていた係員が大騒ぎするも、「預け荷物ですから」とお姉ちゃんが説得。でも、結局ピッケルの入ったバッグを機内に持ち込んでもうた。「後は私が運びますから」とお姉ちゃんは言うが、森崎の荷物を担ごうとしてひっくり返る。(このお姉ちゃんには2人ともドキドキ。写真撮らせてもらえば良かった・・・)どたばたでようやく機上の人となり、無事名古屋へ帰ってきたのでした。
【最後の最後で走った走った...しかし逃げるように帰名し結局北海道では特急利尻2泊+山2泊...なんか違うような気が...けどJALの受付のおね-チャンは最高だった。ビューチフルぶらぼー!!!】

感想など…
長年恋いこがれた山とルートにいけ、感無量です。今は静かな満足感に浸っております。あと、その後の大荒れの天気を考えると、とってもラッキーでした。パートナーとなってくれた森崎君に感謝。さすがに安心感が違う。体力的にも精神的にも楽させてもらいました。ありがとう。

【南陵上から見た利尻はほんに期待以上にすばらしかった!行ってみたい!と長く思っていたところだけに藤田さんには感謝しています。しかしほんとに久々のヒット!てな感じ...余韻ずってるずってる...しかし今年の藤田さんは力(りき)入ってましたね。ちょっと(大幅にか?)かなわんの〜